第4回目は、今が旬!甘くて美味しい住田町のイチゴです!
住田町イチゴ
住田町のイチゴ生産について
岩手県沿岸南部の気仙地域に位置する住田町は、年間の平均気温が11℃前後とイチゴ栽培に適しています。住田町のイチゴ生産は昭和46年頃から始まり、昭和50年代には露地栽培でのイチゴの一大産地となり、同60年代最盛期には町内90戸以上がイチゴ栽培を手がけ、年間の収量177トン、生産額は約1億5000万円に達していました。その後、ハウス型施設栽培への移行を図る生産者が少なかったことや、生産者の高齢化や後継者不足等の問題により、住田町のイチゴ生産は収量及び生産額が落ち込み、現在は町内の数戸が生産を手掛けるのみとなっています。
住田町産のイチゴは生産者のこれまでの努力や工夫等により、甘くみずみずしく、その味の良さから、全国的にも高い評価を受けています。近年、生産者の減少によりその栽培技術の継承が課題になっており、同町では2019年に住田町イチゴの生産技術の継承と高収益作物としてのイチゴの再産地化に向け地域おこし協力隊の募集を行いました(住田町事業「ストロベリープロジェクト」)。今回は、昨年(2019年)7月から「ストロベリープロジェクト」の地域おこし協力隊に就任し、現在、町内のイチゴ生産者 菅野 良一(かんの よしかず)さんのもと、住田町のイチゴの栽培技術について日々研修中の地域おこし協力隊 菊池 一晃(きくち かずあき)さんにお話しを伺いました!菊池さんについては、こちら(第20回移住者インタビュー)にもインタビューを掲載していますので、併せて是非ご覧ください!
住田町「ストロベリープロジェクト」地域おこし協力隊 菊池 一晃(きくち かずあき)さん
こちらのハウスで栽培されているイチゴの品種は何でしょうか
「紅ほっぺ(べにほっぺ)」と「恋みのり(こいみのり)」です。「紅ほっぺ」は酸味と甘味がありケーキなどに向いています。「恋みのり」は艶があり外見の赤みが綺麗で、また香りもとても強く生食での食味がとても良いです。
ハウスで栽培されているイチゴ
美味しいイチゴの見分け方は?
美味しいイチゴはやはり粒の大きなものです。粒の大きいイチゴは株で育つ期間が長いため、栄養をたくさん蓄えて美味しいです。時期で言うと、2月~3月頃のものが一番美味しいと思います。
大きく艶があり赤みの綺麗な絶品住田町イチゴ
住田町イチゴは甘くみずみずしく、しかも粒が大きくてとても美味しいと思うのですが、ズバリ美味しさの秘密とは?
端的に言うと株数を増やさないことです。イチゴは収穫後でも色付きますが、美味しいイチゴはやはり株で完熟させたものが一番美味しいです。摘花して少ない数の実に栄養を集中させると、甘くてとても美味しいイチゴになります。また、こちらのハウスでは、株で完熟させたものだけを出荷しているので美味しいのだと思います。
地元のスーパーに出荷される完熟の住田町イチゴ
住田町イチゴの魅力は何でしょうか
一言で言うと質の高さだと思います。最初に菅野さんの育てられたイチゴを食べさせていただいた時に、その美味しさに衝撃を受けました。やはり農業は「経験」と「勘」の世界だと思いますので、すぐに菅野さんの質の高さに追いつけるとは思わないですが、身近で学べるというはとても大きく上手くノウハウを引き継いでいければと思っています。
イチゴ生産で気を付けなければならないことはどのようなことでしょうか
イチゴ生産で気を付けなければいけないことは多々ありますが、今の時期(収穫期)ですと苗に負担がかからないように花や蕾のうちに適切な摘花をすることです。自然状態のイチゴは、「果房」という房に約15~20個の花を着けて実が出来ます。全ての実を生らせてしまうと、苗に負担がかかり大きく甘い実は出来ませんし、また、その後続いて果房が着かなくなってしまうこともあります。苗に負担がかからないように、適切な摘花をすることがこの時期には大切なことです。
一つの果房に複数の実をつけるイチゴ
摘花作業の様子
このハウスのイチゴの収獲時期は毎年11月初めから翌年の4~5月頃までです。収獲が終了した後は苗を休ませることが大事で、この時期に気を付けなければいけないことは温湿管理で苗を半眠半休の状態に保つことです。そうすると、また秋に実を生らせることが出来るようになります。その他には受粉です。こちらのハウスでは受粉にミツバチを使っていて、花への受粉のタイミングの悪さや、受粉が均一にされなくても形の悪いイチゴになってしまいます。
収獲期にはどの程度出荷されるのでしょうか
収獲最盛期には4パック一箱で約80~120箱を出荷しています。
住田町イチゴはどこで入手することが出来るのでしょうか
地元のスーパーマーケットの㈱マイヤ各店舗で購入することが出来ます。住田町イチゴは、株で完熟したもののみを出荷していますので、あまり日持ちがしません。そのため、地元優先で出荷しています。
地元のスーパーで販売されている住田町イチゴ
一人の生産者の方でどの程度の規模の生産が可能なのでしょうか
一人だとハウス2棟程度ですね。
ハウス1棟はだいたいこの程度の大きさ
普段の作業で大変なことや苦労されていることなどは
生き物や天候等の自然が相手の仕事ですので、こうなるだろうなと予測はしていてもやはり自分の思い通りにはならないところですね。苗の病気や害虫などにも気を配らなければなりませんし、一株一株に生命があり生育状態が異なります。苗の手入れにしても生育環境のコントロールにも苦労しています。
イチゴの株の手入れ作業を行う菊池さん
反対に、イチゴ生産で楽しさややりがいを感じられる時は
やはり一番初めの実を収穫したときですね。収獲の終わった晩春に小苗を採取し、初秋まで育てます。それから日長時間を調整して、イチゴの苗に秋が来たと思わせる花芽分化をさせ、そのあと圃場に定植します。それまで半年間、手塩にかけて育てた苗が可憐な花を咲かせて一番果を実らせた時はやはりやりがいを感じますね。一般的に農作物は「苗半作」と言われますが、イチゴについては「苗八作」なのではないかと感じています(笑)。イチゴ栽培は圃場するまでの苗の育苗がとても大事になります。
白く可憐なイチゴの花
定植するときに使用する道具。なんと菅野さんのお手製とのこと!
また、最近はICT(情報通信技術)やIoT(モノのインターネット)を導入する農家も増えています。しかし、イチゴ栽培に関して言えば、苗の手入れは「人」にしか出来ず、そこに生産者の個性や特徴が出てきます。機械では真似することの出来ない人間の「経験」や「勘」によって育てるというところにおいて「腕の見せ所」だとやりがいを感じています。
現在の生産の課題や問題点などは
私は生産現場に入ってからまだ半年ほどしか経っていませんので、課題や改善点などについては、まだ日々探しながら作業をしているという感じです(笑)。
今後、挑戦されてみたいことなどがあれば
まずは、イチゴの生産者として自立することです。ここ住田町を含む気仙地域はかつてイチゴの一大産地として有名でした。しかし、高齢化や後継者不足等で現在は生産者が数戸にまで減ってしまっています。今後は地域でイチゴ生産をする仲間を増やし、イチゴをまたこの町の特産品として復活させたいと考えています。また、将来は、直売所や観光農園、首都圏等への販路拡大や、加工品の製造、また、スイーツショップ経営等にも挑戦してみたいと考えています。イチゴは常に需要があり、華やかで、また、「映える」商品でもあります。いわゆる日本の「kawaii(カワイイ)」文化にも馴染むと思います。
菊池さんは、これまでに就農経験が全く無いというところから始められたとのことですが、今後、新規就農を考えている方に、もし何かメッセージ等があれば
農業は高齢化が進み、現在は若手従事者が少ない状況です。そのため、若手ではライバルが少なく、成功のチャンスもあると思います。また、農業を通し自然とともに生活することで人間らしく生きることも出来、充実した毎日を送ることが出来ると思います。その他に農業は自営業ですので、作業計画や段取りの仕方等自分のやり方の工夫次第では、自分の生活スタイルや都合に合わせて出来る職業だと思います。農業は日々の努力が生産物という目に見える結果で出てきますので、満足感や充足感を得ることも出来ます。自己実現や自分を磨きたい、成長させたいと考えている方は、農業を体験して農業の素晴らしさ、また楽しさを是非感じてみてください!
住田町イチゴの生産者として自立を目指す、地域おこし協力隊の菊池さん
※菊池さんについては、事情により、急遽今年度(2020年3月末日)いっぱいを以って、住田町地域おこし協力隊から退任されることになりました。住田町では、引続き、住田町のイチゴ生産技術の継承と高収益作物としてのイチゴの再産地化に向け地域おこし協力隊を募集しています!