第22回移住者インタビュー『産地として広く「海が見えるりんご畑」のある風景というのは国内ではほぼ米崎にしかないんです。とても貴重な風景なんですよ』特定非営利活動法人LAMP 平出 祐悟 さん

平出さん トップ画

平出 祐悟(ひらいで ゆうご)さん

群馬県出身

地域おこし協力隊

特定非営利活動法人 LAMP 広報・交流担当

御出身はどちらでしょうか。

出身は群馬県です。

 

陸前高田市にはどのようなきっかけで来られたのでしょうか。

一言でいうと偶然です。僕が楽しそうなことを探していたのと、現在の上司が働く人間を探していたのが、タイミングよく一致したという感じですね。2019年8月当時、何か新しい場所で新しいことがしたいなと思っていて、「SMOUT(スマウト)」という移住希望者と地域をマッチングするサービスに自分のプロフィールを登録していました。いろんな地域の自治体や団体の担当者から声がかかるのですが、その内容は、「条件に合わない人以外に誰彼構わずバラ撒いているようなテンプレメール」がほとんどで、自分のことを見てくれていないなという印象のものばかりでした。その中でたまたま「興味のある」ボタンを押していた団体で、現在勤務している特定非営利活動法人LAMPの代表である松本(松本玄太さん 第15回移住者インタビュー出演)から「あなたのこういう経験やこういうスキルを活かしてほしい」「陸前高田でこういうことをやってほしい」というメッセージをもらいました。それがきっかけです。

 

LAMPさんのサイトにあるスタッフ紹介を見ると、平出さんは今まで様々な地域で活動されていたようですが・・・

出身は群馬県ですが、沖縄県で高校を卒業して長野県で就職後、北海道でペンギンと歩いていました。陸前高田はその性質上、地域を転々としてきた方は多いので、僕以上の猛者はたくさんいますけどね。

 

陸前高田市に移住されたのはいつ頃でしょうか。

移住は2019年の11月29日です。

 

移住されるまでに陸前高田市に訪れることはありましたか。

2013年に旅行中に立ち寄って、タピックで車中泊したのが最初です。2回目が地域おこし協力隊の2次選考で、3回目が移住でした。

 

現在のお住まいはどうされているのでしょうか。

かさ上げ地のアパートに住んでいます。

 

この地域でよく言われるのが、家賃が高めということなんですが、家賃はいかがでしょうか

確かに、同じような規模の街で考えると割高ですよね。ただ、理由は分からないんですが、同じアパートの他の部屋より1万円くらい安い部屋が見つかりました。

 

お住まいは自分で探されたのでしょうか。それとも何か補助等はあったのでしょうか。

補助があって、自分で探しました。地域おこし協力隊の要綱の中に、『住居の用意又は家賃の一部を補助』という内容があって、二次選考結果の通知書に「追って担当者から連絡します」と記載されていて。なので、もちろん、その連絡で住居や補助のことも詳しく説明されて、それを受けてようやく住居選びが始められるものだと思うじゃないですか。だけど、一向に連絡がなくて、採用された側から催促するのも申し訳ないなと思いながらも、もうタイムリミットだというときに市の担当者に「どういう状況ですか」と尋ねてみたら、「えっ、まだ住む所決めてないんですか」みたいな内容のメールが返ってきて。びっくりですよ。これはマズイと思って、すぐ不動産屋や引っ越し業者に連絡をとって、手続きを進めました。書類を郵送でやり取りする間もなかったので、全部PDFファイルで。かなり焦りましたがなんとか不動産屋の担当者が間に合わせてくれました。感謝ですね。

 

この地域での移動はどうされていますか。やはり車でしょうか。

そうですね。元々、北海道で使っていた車があるので、それを持ってきたのと、職場で用意してもらったリースの軽トラがあるのでそれを使っています。

 

運転した感じはどうでしたか。直前に住んでいたのが北海道ということもあり、天候などの環境も大分違うと思いますが。

北海道ほど気を遣うことはないので、まあまあ快適です。油断していると凍っているので気を付けてはいます。

 

平出さんが感じる陸前高田市の雰囲気やイメージを教えてください。

元々の気風なのか、震災後に移住者慣れが進んだのかは分からないですが、地元の人や先輩移住者たちに本当によく面倒を見てもらってます。おかげさまで溶け込むのにもそんなに時間はかかりませんでしたね。

 

米崎りんご

LAMPで生産している米崎りんご≫

 

第15回に代表の松本さんにもお話を伺っているのですが、改めて、特定非営利活動法人LAMPの活動について教えてください。

前回、代表の松本がインタビューを受けた時点では、米崎りんごに関することが活動のほとんどだったと思うのですが、現在では松本が参加している「食と農の森」という若手農業者の集まりなどとも連携しながら、米崎りんごに限定せず、地域の農家の「やりたい!」を応援しながら、地域の農業を守っていくことを目指しています。もちろん、LAMPは米崎りんごが一番メインですので、自分たちでも米崎りんごを生産・販売しながらですね。

 

LAMPでは米崎りんごの生産・販売だけでなく、収穫体験も開催されていると伺いました。

収穫ももちろんできますし、収穫に限らず、それに至るまでの過程全体で農業体験を開催しています。畑には1年中やることがありますからね。冬から春にかけて芽や花がつくところから始まり、りんごの実には見えないような小さな実の状態から、段々と大きくなって、見慣れたりんごの形になっていく。一般の人は日常生活の中でその過程を見ることは出来ないと思うので、そういうところも見てほしいんです。今は感染症の問題があるので、農業体験の一般募集は休止させていただいていますが、地元の子ども達とか、地域内の限られた範囲の中では、継続して受け入れをおこなっています。落ち着いたら、是非、世界中の人に「海の見えるりんご畑」に農業体験に来ていただきたいです。

 

平出さんは主にどのようなことを担当されているのでしょうが。

広報と交流担当をしています。最近だとLAMP の公式サイトをリニューアルしましたし、法人の公式SNS(Facebook、Twitter、インスタグラム)も基本的には僕が管理させてもらっています。取材の対応や、イベントの企画から受け入れまでの対応なども自分の担当業務です。今は交流の方はバリバリ実施できない時期でもあるので、特に広報の方に注力して、今後の交流に繋げていくため、それをPRするためのものをいろいろ作っています。

 

新型コロナウイルス感染症の影響で出来ないことも多いと思いますが、何か影響などはありましたか。

今取材を受けている畑とは別に、更地の状態から年々植樹を進めている畑があって、今年も3月に植樹会を2回予定していたのですが、両方とも中止になりました。地元の保育園の子たちにも植樹をしてもらって、植樹後に畑で読み聞かせをするための紙芝居も、交流のある海外のイラストレーターに発注するなどして計画を進めていましたが、それも発表する場が無くなってしまいました。そこで、イラストレーターから頂いたデータをどうしようかと考えた時に、じゃあ、YouTubeの動画にしようとなり、仕事用のパソコンの中に動画編集ソフトが入っていたので、操作を覚えるところから始まって、何とか動画にしました。BGMはミュージシャンでもある代表の松本が、読み聞かせの声は代表の奥様が、脚本は紙芝居の企画者の吉田が担当するなど、LAMPとLAMPの周りの人たちだけで完結させた作品です。

今、着ているこのTシャツも、こういう状況で米崎りんごのPRをどのようにやっていこうか考えた時に、大手企業のウェブサイトの片隅にちょこっとでも米崎りんごのロゴが映り込めばいいなと思って、ユニクロのUTme!で販売することを提案したものです。(気になる方はページ下部のリンクからLAMP公式サイトへ!

 

ロゴマークとTシャツ

≪Tシャツにも使われている米崎りんごのロゴ。りんごの中に地域の特徴が描かれています≫

 

LAMPのサイトにある「米崎りんごロゴ」は海外の方がデザインされたと紹介されていましたが、絵本を描かれた方と同じ方ですか。

別の方ですが、どちらの方も2017年のDOORtoASIAという取り組みで陸前高田に滞在しながら地域の方と交流された東南アジアのデザイナーさんたちです。ロゴはその時に提案していただいたものをLAMPで使わせてもらっているもので、いずれはLAMP以外でも活用してもらえればと思っています。

このロゴですが、太陽と山とそして海が描かれているところが米崎りんごの特徴をよく表していて、やっぱり現地に来て、現地の風土と関わったからこそ生まれたアイデアだと思っています。スタッフはみんな気に入って使っていますよ。

 

米崎りんごについて、少し調べると歴史が長いという記述がみられますが・・・

始まりが明治20年代あたりで大体130年ぐらいの歴史があります。結構、ネット上に曖昧な情報が多くて、岩手で最古という情報も出ていたりなどもしますが、LAMPスタッフでも調べ直して、それは間違いだということが分かっています。そういった古い記録とか、埋もれた情報を掘り起こす作業も最近少しやっているところです。

 

りんごの苗木

≪今年の3月にLAMPのスタッフが植樹を行ったリンゴの苗木≫

 

震災があったとはいえ、長い歴史があるものが途切れかけてしまいそうになるのは悲しいことですね。

震災もそうですが、バブル経済の頃に離農した方も多いと聞いています。もちろん、震災でも低地の畑は被災していますし、仮設住宅や宅地になった畑ももちろんありますが。今、植樹を進めている畑も、元々立派なりんご畑があったところで、管理ができなくなり2014年頃更地になってしまった畑だそうです。そこにもう一度「海の見えるりんご畑」の風景を取り戻そうということで、さきほど言った通り今年は中止になってしまいましたが、毎年3月に地域の人たちに植樹してもらいながら、いずれは観光農園化しようとLAMPでは考えています。そうやって多くの人に関わっていただくことで、米崎りんごの歴史を途切れされず、後世に繋いでいくための手掛かりを試行錯誤しながら作っています。

 

平出さんが思う米崎りんごの魅力とは。

昨年の11月末に引っ越してきたばかりなので、まだ、ふじなどの限られた品種しか食べたことはないので、味を語れるほどではないのですが……でも、そもそも味というのは、ものすごく他の産地との差別化や説明が難しくて、どこの産地も自分のとこが一番だと思って作ってるじゃないですか。その中で、米崎りんごだけが持つ魅力というのが「海の見えるりんご畑」の風景なんです。りんご畑でこの景色っていうのが国内ではとても珍しくて、例えば、りんごの生産地上位100市町村の中でも海岸線を持つ市町村というのは10市町村しかないんです。さらに、海岸線を持つ市町村でも基本的には平地や中山間部でりんごを生産しているので、それらの市町村でもほとんどりんご畑から海を眺めることはできないんです。もしかしたら、小さなりんご畑を海の近くに作ったとか、遠くかすかに海が見えるとかはあるのかもしれないですけど、産地として広く「海が見えるりんご畑」のある風景というのは国内ではほぼ米崎にしかないんです。とても貴重な風景なんですよ。

色々おちついて、地域外からいくらでも人を呼べるようになったら、この景色をゆっくり眺めていくだけでもぜひ寄ってもらいたいなと思っています。

 

りんご(さんさ)≪赤く色づいてきた「さんさ」≫

 

LAMPが育てたリンゴはいつ頃から購入できるのでしょうか。

LAMPの畑で一番初めに収穫できる「さんさ」と「きおう」という品種の詰め合わせ「秋の訪れ」セットは既に販売がはじまっています。今後、「早生ふじ」や洋梨の「フレミッシュ・ビューティ」から始まり、11月までは順番にラインナップが増えていく予定です。お楽しみに!

 

りんごの品種の名前が出てきましたが、LAMPではどのぐらいの品種のりんごを育てているのですか。

20種類以上育てています。十分に収穫量のあるものは品種単独で販売していますし、収穫量の少ないものは、その時期の旬の品種を詰め合わせた「農家おまかせもぎたてセット」として販売しています。

 

ウミネコの親子

≪平出さんが撮影されたウミネコの親子≫

 

この地域に来てから楽しまれていることなど教えてください。

陸前高田市内の海から山から、観光施設から道端の石碑から、あらゆるものを訪ね歩きましたが、一番夢中になったのはウミネコです。陸前高田市では市の鳥に「かもめ」を指定していて、広田半島沖の椿島は国の天然記念物に指定されている国内有数のウミネコ繁殖地となっています。ただ椿島は陸から1㎞くらい離れているので、繁殖の状況を観察しようにも簡単にはいかないんですよね。それで市内の海岸を探し回ってみたら、気仙町の要谷漁港の中に穴空島という小島があって、護岸から10メートル程度の距離で50ぐらいのつがいのウミネコが集まっているのを3月に見つけました。これはいけると思って、ちょこちょこ通って、求愛給餌、交尾、巣作り、抱卵と順調に進んで、最終的に20羽くらいのヒナが孵るのを見届けることができました。

陸前高田市は自然が豊かなまちなので、いろんな野生動物が生活圏に出てきますけど、動物園や水族館があるわけではないので、生き物たちに出会うのも偶発的で、彼らのライフサイクルを辿ることはなかなか困難です。ですが「かもめ」は市のシンボルに指定されていますので、それは、陸前高田市の象徴のひとつなわけです。特別なものではなく日常に普遍的に存在し、慣れ親しんでいるからこそのシンボルだとは思うのですが、それゆえに、地元の方はその魅力を見失ってしまいがちです。これはもったいないなと思っていて。ウミネコに限らず、陸前高田にはそういうものがまだまだたくさんあるんです。なので、そういうものを掘り起こす作業が、陸前高田生活でのいちばんの楽しみです。その筆頭が「海の見えるりんご畑」という特別な風景であり、米崎りんごってわけですね。

そういう楽しみの上でもうひとつ、陸前高田市観光物産協会さんのバックアップではじまった「たかたコンテンツらぼ(公式サイト)」というゆるい部活動の集まりにも参加しています。らぼの中で僕は登山部として、氷上山の登山マップをデザインしました。それまでは駐車場や登山口の情報もほとんどなくて、登山マップに至ってはほぼ山頂 の9合目、一か所にしか設置されていないんです。そこで、登山ルートの情報とかは登る前にほしい情報だよねってことで、他の部員と現地調査しながら制作しました。マップは、まちの縁側とか道の駅の観光物産協会さんの窓口に置いてあって、無料でもらえます。気軽に登れて、三陸のリアス式海岸地形を見渡せる山なので、是非多くの方に楽しんでもらいたいです。クマには注意してくださいね!

 

逆に大変だったことはどんなことでしょうか。

なんかめちゃくちゃカビますね。今年の長い梅雨によるものなのか、やませが起こるなどの地域性なのか分かりませんが。まだ移住1年目で、他の年との比較が出来ないので何とも言えませんが。今まで住んでいたところよりも、とにかくカビてます。

 

りんご畑の風景

りんご畑から見える風景。植樹を進めている畑ではもっと良く海が見えるとの事です。≫

 

今後の目標ややりたいことがあれば教えてください。

面白い物をたくさんの人に見てもらいたい、知ってもらいたいという気持ちがあるので、米崎りんごも、米崎りんご以外も陸前高田の魅力を掘り出したり、発信していきたいです。

岩手県は最初のCOVID-19感染者が他の地域と比べ何カ月も遅れてきたこともあって、経済活動を再開させていく事に自治体が慎重になりすぎていると感じています。なんでもかんでも中止にされてしまえば、地域住民は他の地域へ娯楽を求めて出掛けていくしかないわけで。それは、感染の拡大という身近な問題だけではなくて、いずれ人口の流出にも繋がるものだと感じています。誰も窮屈なまちには住みたくないですもんね。逆に、地域内に十分に楽しいことがあれば、外へ出掛ける必要もないですし、ずっと暮らしていきたくなるわけじゃないですか。そういうことです。そう思える地域作りにちょっとでも関わることができれば、ってところですね。

 

 

LAMPで生産している米崎りんごの購入は公式サイトから!

🍎 特定非営利活動法人LAMP 公式サイト

 

平出さんが動画に仕上げたLAMPオリジナルWEB絵本『いち、に、さん、し、りんご♪』はYouTubeのLAMP公式チャンネルからご覧いただけます♪

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たかたコンテンツらぼ登山部の活動で平出さんがデザインされた氷上山登山マップ。道の駅等にて無料で配布されています!

氷上山登山マップ

 

 

 

 

 

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