第24回移住者インタビュー『陸前高田市にこれまでにないものを新しく始めて、地域の味として将来に残したい』つぼ焼きいも専門店 おいもの日 経営者 萩原 威之さん

萩原 威之(はぎわら たけゆき)さん

東京都出身

つぼ焼きいも専門店 おいもの日 経営者

 

御出身はどちらでしょうか

出身は東京都です。

 

東京都にはいつ頃までおられましたか。

民間企業に勤めていて、28歳ごろまで住んでいました。

その後、新潟に移住しまして、そこで約7年間暮らした後、陸前高田市に移住しました。

 

新潟県に行かれたのは、お仕事の都合などでしょうか。

仕事の都合ではなく、地方に住みたくて移住しました。東京はずっと暮らしていたので便利だなっていうのは当然分かりますし、その恩恵を受けてきたんですけど、何と言いますか、東京は遊びに行くのであれば凄く楽しいとは思いますが、ずっと住み続けるところではないなと感じていました。

地方にはバイクのツーリング等でよく出かけていたのですが、地方は食べ物もおいしいし、景色もきれいですし、やっぱり都会よりも人が温かいなというのを実感していて。そういった地方が人口減少等の影響で衰退が進みつつある一方で、東京はお金と人口の一極集中がずっと続いているのが面白くないなと思い、それなら地方を元気にしたいと考え新潟県に移住しました。

 

現在は陸前高田市に移住されていますが、移住のきっかけを教えてください。

どこから話したらいいのか・・・実は新潟にいた時は市役所の職員だったんですよ。なぜ市職員になったかというと、街づくりや地方活性化に携わりたかったので、やっぱり街づくりといえば市町村レベルかなと思って入庁しました。ですが、その自治体の人口規模が地方にしてはまあまあ多い数十万人ぐらいの街で、その分、市役所も様々な部署があり、異動希望を出してもなかなか希望の部署に配属されなくて。もしかしたら、希望部署に配属されずに定年を迎える可能性もありますし、配属されても数年で違う部署に異動になってしまいます。もちろん、どの部署の仕事であっても少なからず街づくりに関わっているものだと思いますが、もっと深く街づくりや地方活性化に関わりたいと思って市役所に入ったので、このままだと時間がもったいないと感じていました。

その代わり、プライベートで地域に出ていろいろと活動をしていると、その方がよっぽど街づくりや地方活性化に関われている実感があって、別に公務員じゃなくても街づくりは出来るんだなと気付いて、市役所を辞めることにしたんです。

ではどこへ移住しようかと国内で4箇所候補地を決めてお試しで移住したのですが、陸前高田市は東日本大震災津波のこともありましたし、一番人口規模が小さい自治体でもあったので、ほかの自治体より不利な状況にありました。私にとってはそういった条件に恵まれていない場所の方が、伸びしろややり甲斐があるのではないかと思いまして、陸前高田市に移住しました。

 

ちなみに他の候補地はどんなところがあったのでしょうか。

そうですね、お試しで移住した中で陸前高田市と対極にあると感じたのが岐阜県の飛騨高山です。ここはインバウンドに成功していて観光客も凄いんですよ。日本三大朝市と言われる朝市が毎日開催されていて、私は地方の朝市だから大したことないんだろうなと思っていたのですが、実際に行くとものすごい規模で、川原に沿った通りに屋台がバーッと並んでいて平日なのに賑わっている場所でした。ただ、そんな場所なので別に自分が行かなくてもほとんど完成されていて、ここじゃなくてもいいかなと思いましたね。他にも福島県の二本松にも行きましたし、新潟県に愛着があったので、当時働いていた市とは別の自治体も候補として考えていました。

 

実際に陸前高田市に移住されたのはいつ頃になりますか。

2017年の12月に移住したので、3年が経ったくらいになりますね。

 

移住される際にこちらでのお仕事等は既に決められていましたか。

私はもともと、陸前高田市に限らず、他の候補地も含めてつぼ焼きいもをどこかでやろうと考えていました。つぼ焼きいもの販売は翌月から始めましたが、移住してすぐに別の仕事もしていたので、最初は日曜日だけの販売でした。

 

では、現在のお住まいについて教えてください。

移住した当初は古民家を借りて住んでいましたが、現在は県営住宅に住んでいます。本当は空家を借りられたらと思っていたので、地元の人に空き家がないかと聞いて回っていました。でも、空き家はあっても貸してもいいよという空家が見つからず、住んでいた古民家を出なきゃいけない期限もあり、県営住宅へ引っ越しました。

 

地域の方が協力してくれたようですが、家を見つけるのは難しいのでしょうか。

地元の人だとどこが空き家か把握されていて、持ち主が誰かも比較的わかるので空き家探しをお願いしました。ただ、荷物の整理が終わってないとか、仏様がいるからとか、他の人が住むのは嫌だとか、そういった理由で貸してくれるところは見つかりませんでした。

 

いずれまた空家に住みたいという気持ちはあるのですか。

個人的には最初に借りていた古民家が凄く立派な造りで、快適で立地も良かったので、また住みたいなという気持ちはあるのですが、やっぱり、結婚すると一人の判断は決められないところがありますし、利便性を優先して市街地に近いところを、と今の場所を選んでいるので、空家が見つかったからといってそこに引っ越すかというとなかなか難しいと思います。

 

地域での移動について教えてください。やはり車ですよね。

そうですね。車です。

 

今年は珍しく気仙地域でも結構な雪が積もりましたし、例年だとブラックアイスバーンなどで運転に苦労している方も多いですが、萩原さんはいかがでしょうか。

私は岩手県に来る前に新潟県にいたので、もっと雪が降るんですよね。車がすっぽり見えなくなるまで降ったら、降ったなぁと思うのですが、特に岩手の沿岸は内陸と比べても雪が少ないですから、車を出す前に雪堀りをしなくていいですし、帰ってきて駐車場の区画を雪かきしなくていい時点でもう全然気にならないですね。

新潟は日本海側なので冬は曇りか雪で晴れ間が見えたら結構珍しいと言われるぐらいなので、全然気候が違います。本当に気候に恵まれているなと思いますね。

 

この地域はあまり公共交通機関が整備されていないところがありますが、生活していて、不便に感じることはありますか。

もちろん、もっと発達していたらと思うんですけど、人口規模もそうですし、岩手県が広すぎるっていうのもあって、なかなか公共交通機関が整備されないのは分かり切っていることなので、そんなに不便だとは思わないですね。もしかしたら、年を取って車の運転が億劫になってきたときに、もっと生活の足があったらいいのになと思うかもしれないですけど、現時点では特に不便だと思ったことはないですね。それだけ車しか利用しないからだと思います。

 

現在、焼きいも専門店を営んでいるとのことですが、萩原さんのお店「おいもの日」では恐らく岩手では初となるつぼでいもを焼く「つぼ焼きいも」を販売しているということです。つぼ焼きいも専門店を始めるにあたって岩手で初ということにも注目されていたのでしょうか。

岩手で第1号というのを目指したわけではないんですけど、街づくりとか地方活性化をするにあたって、陸前高田市にそれまでにないものを新しく始めて、地域の味として将来に残したいなという思いがあって、つぼ焼きいもに限らず、何が自分に出来るのかとずっと考えていました。

例えば、凄くこだわりを持って作っているパン屋さんや蕎麦屋さんがあって、そこのものが本当に美味しいものであれば、他の地域からでもお客さんが来ますよね。ですけど、パンも蕎麦もこだわって美味しいものを作ろうとすれば、修行をしないと簡単には作れないですし、やるには結構な設備投資が必要になるので、やろうとしてもなかなか難しいなと感じていました。自分に何が出来るかなと思っていた時にたまたまつぼ焼きいもを知って、実際に販売していたお店に食べに行ったら、凄く美味しくて、これはいいなとなりました。

また、それだけではなくて、パンだと小麦や卵、牛乳、蕎麦もそうなんですが、食物アレルギーで食べられない人もいるんですよね。でも、サツマイモは食物アレルギーの原因にならない食材で、離乳食を食べている赤ちゃんから、おじいちゃんやおばあちゃんまで幅広い人に楽しんでもらえます。それに、焼きいもってすごく親しみのある食べ物だと思うので、つぼ焼きいもを通して街づくりに関わっていくことにしました。

 

つぼ焼きいもを販売しているお店は全国的にも限られると思いますが、そうなると道具など揃えるのも大変だったのではないですか。

“つぼ”は焼きいも専用のものがあり、受注生産だったので結構高かったですね。貯金で買えなくもなかったのですが、色々な人に活動を知ってもらいたかったので、クラウドファンディングを活用しました。現在は陸前高田市のチャレンジショップに入っていますが、当初はチャレンジショップもなかったので、日曜日に街中にある公園にテントを出して販売していました。

 

つぼ焼きいもを作るうえで大変なこと等教えてください。

つぼの重量が30~40kgあり、持ちにくい形をしているので、持ち上げる時は大変です。

また、3時間程度かけて1つのつぼで20本しか焼けないので、量産ができません。週末にイベントがある時は何日も前から焼いています。時間と手間はかかりますが、その分石焼きいもより格段に美味しくなる科学的な理由がちゃんとあるので手が抜けません。

ただ、夏は換気していても室内が45度ぐらいになるので、夏は本当に大変です。

 

「おいもの日」の情報を発信しているSNSに焼きいもを使用したお菓子を販売されている様子もありましたが、お菓子はどうして販売されているのですか。

食物アレルギーの一つとして、砂糖が食べられない人がいるだけでなく、小さい子どもを持つ親御さんは子どもに砂糖をあまり与えたくないという方もいます。つぼ焼きいもは石焼きいもよりはるかに甘いため、その甘さを活かして安心して食べられるお菓子を作ろうと初めから考えていました。

また、つぼ焼きいもは冷やして食べてもすごく甘くて美味しいので、夏を中心に冷やしたものも販売しています。1度食べた人が冬でも買いたいと来店されるくらい人気があります。

 

-SNSを見ると陸前高田市だけでなく、盛岡市の「よ市」にも出店されていて陸前高田市外でも「おいもの日」を知る人が増えてきているようですが、今後、販売範囲を広げていかれるのでしょうか。

よ市で販売を始めた当初は、つぼ焼きいもってなんだよって素通りしていく人が多かったですが、開催期間の中盤辺りから行列が出来る様になりました。

今のところは青写真でしかないですが、盛岡などの内陸にお店を出しても面白いだろうなとは考えていますね。当然資金面などの問題もあるので、今すぐにできることではないですが。

陸前高田市は津波によって昔ながらのお店が無くなってそのまま再建されないところもあるので、私が新しい味を生み出して、今の子ども達が大人になって食べたときに「これ、昔からあるよな、懐かしいな」と感じてもらえるようになりたいという目標もあります。そういった長いスパンで街づくりを考えていますし、過疎地である陸前高田市に人を呼び込みたいとも考えていますので、あくまで軸足は陸前高田市に置いて市外にアピールすることで、他の地域の人が陸前高田市にどんどん来てほしいと思っています。

 

萩原さん① 広田半島の風景

《広田半島の風景》

 

移住した際や直後に苦労したこと等はありますか。

実は、移住して生活を始めてからしばらく地元の人に「こんな田舎に来て困ったことないか」とか「不便だろ」とかよく聞かれていて、なにかあるかと考えてみたのですが、しばらく経っても出てこなかったので、特にないのだと思います。もっとあんな店があったらとか言ったらキリがないと思いますけどね。今は何でもネットで買えますし、マイナス面より、近くに海と山があって、空気もきれいで食べ物がおいしくて、そういう魅力の方がよっぽど大きかったので、不便なことを聞かれても思いつかなかったです。

 

この地域に来てから何か楽しまれていることやお気に入りのスポット等教えてください。

前の家では海が目と鼻の先にあったんです。今の家はちょっと出て高台に行かないと海が見えないのですが、海が見える場所へ行くと気持ちいいなと感じます。あと、海を見ると養殖の棚があるじゃないですか、他にもりんご畑があったりとか、生産している人との距離を近くに感じています。東京にいた頃はこの食べ物は誰が作っているのかは全然わかりませんでしたけど、この地域にはこういう特産があって今も生産している人がいて・・という食べ物の流れも分かります。こういうことからもこの地域で暮らしている実感が凄く湧いてきます。

お気に入りのスポットを上げるのであればやっぱり広田半島ですね。人との距離も近かったですし、近所を歩いていると“お茶っこ”に誘われたり。他の地区の人に話すと広田は特別だって言われますが、今でも本当に良いところだったと思います。

 

今後やりたいこと等を教えてください。

この先十数年経って、今食べてくれている子どもたちが大人になったときに「懐かしいなぁ」「昔からあるなぁ」と感じてくれたら、そのときにようやく胸を張って地域に根付いたと言えるのかなと思います。

また、子ども食堂の事務局もやっていて、新型コロナウイルスの影響で開催できなくなって1年以上になるのですが、それを再開したいという気持ちもあります。この子ども食堂は始めてから徐々に子どもたちが増えていって100名ぐらい来るほど盛況になっていました。そこでは、ただご飯を食べるだけじゃなく、駆け回ったりいろいろな遊びができるスペースがあって、見ていてすごく楽しそうにしている姿がとてもいいです。また、ここを経験した子どもたちが中高生になって、今度はボランティアとして来てくれる流れができているところも素晴らしいなと思っています。今は新型コロナウイルスの影響で開催できていませんが、子どもたちに喜んでもらいたいですし、子どもたちを連れてきた大人同士のコミュニティの場にもなっていたので、またいつか再開させたいなと思っています。

 

 

 

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