第26回移住者インタビュー『大船渡市でジビエ事業を起こして地域振興への突破口にしたい』大船渡市地域おこし協力隊 根本 大介 さん

第26回移住者インタビュー『大船渡市でジビエ事業を起こして地域振興への突破口にしたい』大船渡市地域おこし協力隊 根本 大介 さん

根本 大介(ねもと だいすけ)さん

神奈川県出身

大船渡市地域おこし協力隊

(インタビュー実施日:令和3年9月3日)

-御出身はどちらでしょうか。

神奈川県横浜市です。ただ、父親が転勤族で小さいころから各地を転々としていまして、千葉県木更津市や埼玉県所沢市でも生活していました。所沢市に一番長く住んでいました。

-移住をしようと思ったきっかけを教えてください。

父親の実家が茨城県の山間地域にありまして、たとえて言うなら住田町をイメージしていただけたらいいと思います。僕は、そういった山間地域というか、自然がすごい好きで魅力的だなって思っているんです。

そんな中、昨今ニュースとかメディアとかで地方創生や地域振興が非常に取り上げられているじゃないですか。就職活動をしているときも、就職してから一般企業で働いているときもそういうワードは何度も耳にしていて、そういったことを意識するようになりました。父親の実家の地域も過疎化が進んでおり、人がだいぶ減っている状況ではあるんですが、お祭りなどの地域行事も盛んにやっていたという話も聞いて、そういう地域の文化が無くならないでほしいという思いが強くなりました。細々しい力ですけど、これからの人生をかけて地方の振興に活躍できるような人材になりたいという思いで、移住を決意しました。

-大船渡に移住されたのはいつ頃ですか。

去年の11月です。ちょうど10ヵ月くらい経ちました。

-移住をされるまでにどのような準備をされてきましたか。

地域活性化総合研究所の福山さんという方と知り合いでして。それに、福山さんの次男と大学が一緒ですごく仲が良いんです。そういうのもあって、これまでに何度も大船渡に遊びに来ていて魅力的な場所だなと思っていました。その中で、福山さんに地域おこし協力隊のことを教えていただき、協力隊の募集が出たのでそれに応募しました。だから、準備としては福山さんとやりとりをして情報を収集した、というのがありますね。「この日までに申込書送っておいてね」とか、いろいろと教えていただきました。

それから、前職の会社を辞めるということも準備に入るんじゃないかなと思います。そこはやっぱり結構ネックでしたね。面接して採用していただいている身であるので、前職の会社を辞めるというのは、自分にとっては大きな決断であり勇気がいることでした。お世話になった方もたくさんいたので、自分が会社を辞めることが裏切りみたいに思っている方も中にはいたんじゃないかなと思うんですけど、「やりたいことができた」とちゃんと伝えて、最終的には「応援している」とか「頑張れ」と言葉をかけていただきました。だから、移住をしようと思っている人にとっては、今勤めているところを辞めるというのも障壁になり得ると思いますね。

-前職の企業ではどのくらいの期間勤めていたのですか。

2年半くらいです。証券会社に勤めていました。ですので、今の自分のやっていることはまるで毛色が違いますね。正直言うと、就職活動をしていた頃から地方創生や地域振興などに関心があったのですが、就活する上ではやはり収入面もよく見るところではあるので、まずはその点を重視して就活をしていました。

それから、証券会社では、経営者など経験豊富な方々を相手に仕事をするので、そういった方々と関わることで自分自身にとっても成長できる部分があるんじゃないかという思いもあって、証券会社に就職しました。前職の仕事で得た知識や経験を、自分のこれからの活動にもどんどん活かしていきたいと思っています。

-地域活性化総合研究所の福山さんから情報を提供していただいていたとのことですが、ということは移住先の候補は初めから大船渡市一本で考えていたのですか。

そうですね。大船渡市だけを視野に入れていました。やはり移住先に知り合いがいるというのは、移住する上ですごく大事なことだと思います。基本的に独り身で移住するので、移住後の人間関係の形成という点も懸念材料になるところなのかなと思います。ですので、移住先に知り合いがいたり、移住先の地域の人と事前に連絡を取り合って人間関係を構築したりすることは重要だと思います。

大船渡に知人や友人がいたというのが、ここに移住しようと思った一番の理由です。他にも、海とか山とか自然が豊富だし、スーパーで安くて美味しい魚を買って食べられるし、これまで何度も遊びに来るうちに、大船渡のことをどんどん好きになっていったというのも、決め手の一つです。

-前回の移住者インタビューでご協力いただいた陸前高田市観光物産協会の多勢太一さんから、今回のインタビューのお話が来たと思いますが、多勢さんとはどういう経緯で知り合われたのですか。

大船渡市に移住してきた後、他の地域おこし協力隊の知り合いを増やしたいと思い、陸前高田市のNPO法人である高田暮舎(たかたくらししゃ)に挨拶しに行きました。陸前高田市は協力隊が20人弱ぐらいいらっしゃるんですよね、それに若い隊員の人が多いというのを聞いていたので、交友関係を広げたいと意気込んで挨拶しに行きました。そこで、高田暮舎のスタッフの方に陸前高田市をいろいろと紹介していただいたんですけど、観光物産協会も紹介していただきまして。それで多勢さんと知り合いました。仕事ではもちろん、プライベートでも仲良くさせていただいていて、遊びに誘っていただいたり一緒にスポーツをやったりしています。

-現在の住居について教えてください。

碁石浜の目の前にあるシェアハウスで生活しています。そこは元々は海楽荘という民宿で、地域活性化総合研究所の福山さんが「ギークハウス」という名称のもとで、シェアハウスを運営しています。ですので、ここも福山さんに紹介していただきました。家賃が光熱費込みで2万5000円くらいでアパートに比べると安いです。それから、元々の海楽荘は大船渡温泉の社長さんが所有しているものであり、震災の影響で施設内のボイラーが使えなくなってお風呂に入れない状況だったんですけど、社長さんのご厚意でシェアハウスの住人は毎日温泉に入らせていただいています。その点においてもシェアハウスはいいですね。仕事帰りに市内のジムに寄って運動し、その後に温泉に入ってさっぱりして家に帰るという、素晴らしい流れが定着しています。毎日よく眠れています。

-シェアハウスということは、根本さんの他にも住人がいるということですよね。

そうですね。今は僕含め3人が住んでいますが、多いときでは6~7人いました。部屋数としては8部屋用意されています。8部屋とも個室なので基本的には一人だけの空間にはなりますが、共有スペースとしてトイレやキッチン、コワーキングスペースが設けられていて、そこでたまに同居人の方と話すときもありますね。

-大船渡市で生活してみて何か感じたことはありますか。

父親の実家の地域とこのあたりの地域では結構似通っている部分もあるので、そういった意味では、移住してきた後でも本当にノンストレスで生活できています。それから、山とか海とか景観がすごい綺麗だなと思います。自分が自然好きというのもありますが、こういった自然は、自分にとっては「ここにしかない景色」というか、何か神秘的な光景として目に映るんですよね。そこにいるだけで非日常的な空間にいるように感じて、とても楽しいんです。この地で生まれ育ってきた人にとっては当たり前の景色すぎてそのように感じることはないかもしれませんが、そういう意味では、自分は違う感覚を持って過ごせているんじゃないかなと思います。

ただ、生活面で一つ言うと、アパートの家賃が高いなって思います。僕は、今はシェアハウスに住んでいるので家賃は安く済んでいますが、大船渡町とか盛町とか、人が比較的多くいる地域は、結構家賃が高いと感じてしまいます。僕もゆくゆくはそういったところに引っ越したいと思ってはいるものの、ちょっと躊躇してしまいますね。割と東京とかと家賃を比べても変わらないぐらいだと思います。アパート自体の数が少ないですし、土地も高いみたいなので、家賃が高くなってしまうのはしょうがないことなのかもしれませんが、移住者目線で見たとき、そこを改善しないと移住するのが難しく感じる方も多いんじゃないかなと思います。

-大船渡市で生活してきた中で印象深かった経験や思い出はありますか。

まず釣りですね。前職の時から釣りはやっていて好きなんですけど、大船渡にはすぐ行ける釣りスポットが多くて、釣り好きな人にとっては絶好の場所だと思います。それから、以前舟釣りもしたんですけど、最高でした。教科書に載っていたリアス式海岸が眼前に広がっている中で釣りをできたっていうのはすごい感動しましたね。楽しかったです。

あとは、夏虫山の登山が思い出に残っています。夏虫山、すごい好きなんですよね。頂上からは山と海が一緒に見えて、絶景でした。

それと、シカの狩猟に同行したのも印象に残っています。碁石に「シタボ鮮魚店」という魚屋があるんですが、そこの店主さんがハンターでもあって、シカとか鳥とかを狩っているんです。個人的に前々から狩猟に興味があったので連れていってもらいました。

この狩猟の体験をきっかけに、今すごいジビエに興味があって、鹿肉をジビエとして活用できないかと考えています。最近ジビエ料理が注目されていますが、そういう使い道があるのに、大船渡では出荷制限があってジビエを売ることができないんです。シカが人の手によって殺された後、価値あるものとして提供することができていないというのが現状なんです。それではシカがかわいそう!っていうのと同時に、もっといい活用方法があるのではないかとも思います。だから、ジビエ事業をやるべきなのではないかと、自分の中で検討しています。

シカのことを調べれば調べるほど、今後も被害は深刻化していくだろうと思います。地域の人口はどんどん減少していく中、シカの数は増加していく。シカの被害によって農家さんも農業を辞めてしまったり、人口が減っているから新しい狩猟の担い手も不足してしまったりするのが目に見えている。そのような中で、自分がジビエ事業を起こすことで、シカによる被害の対策になったり新しい狩猟の担い手の確保につながったりできるのではないかと考えています。ジビエ事業の実現に向けての第一歩として、僕自身、今年中に狩猟免許を取得できるように頑張ります。

〈夏虫山の山頂から見た絶景〉

-地域内での移動手段について教えてください。車はお持ちですか。

はい。中古で買いました。やっぱり車がないと自由に動けないので、生活する上では必需品です。カツカツの貯金をはたいて車を購入しましたが、自家用車の確保という点も、移住者にとってはなかなかネックな部分だと思います。

-市内を運転してみた感覚はどうですか。

そうですね、結構曲がり道や坂が多い印象ですね。運転しやすいとは言えないかもしれませんが、僕はドライブ感覚で楽しんでいます。景色もいいですし。碁石海岸インターチェンジのところから見える海の景色はすごくいいですね。

冬の運転も、僕個人としてはそこまで大変ではないという風に感じました。雪が降ったらそれはもちろん大変ですけど、内陸に比べて大船渡はそこまで雪が降らないのが救いです。大船渡は夏も涼しいですし、気候という点ではすごい住みやすい地域ではあると思います。

-地域おこし協力隊での活動について教えてください。

「ICT推進」を任されています。最初は、鳥獣の罠のICT化に向けた取り組みをしました。それから、農家さん漁師さんの支援ということで、PR動画やホームページを制作したり、アンテナショップと連携して農家さんが作ったお米を販売するお手伝いをしたりしました。あとは、ブドウ農家さんのホームページ作成やネットショッピングの支援もしています。これはまだ始めたばかりで、今はいろいろと擦り合わせている段階です。それと、シニア向けのスマートフォン教室も開催しています。主にテレワークセンターと、末崎にある「居場所ハウス」という施設で、高齢者の方々に集まっていただいてます。

以上が自分が任されているもので、これを軸に活動していますが、もう一つ、自分のやりたいことであるジビエ事業の実現に向けて準備を進めているところです。ここでも、ICTの一環として、罠のICT化というのをまず進めていきたいと思っています。地域おこし協力隊での活動を、ジビエ事業にも活用していきたいです。

〈農作業中の根本さん〉

-大船渡市の地域おこし協力隊の募集は、「ICT推進」以外にもあったのですか。

当時は「ICT推進」しか募集していませんでした。今後、ICTは色々なことに活用されるし、どんどん進化していくものなので、自分としてもそれに関わる活動をやってみたいという思いがありました。ですので、大船渡市の地域おこし協力隊で「ICT推進」の募集があったことは運が良かったと思います。

-根本さんの思う、大船渡市のおすすめスポットを教えてください。

先ほども紹介しましたが、夏虫山は本当に絶景穴場スポットなのでおすすめです。

それから、五葉山ですね。この山は、登山が好きな方に人気の山で、僕も登ってみたんですけどすごい面白い山です。結構急勾配で獣道もあって大変ですけど、登りごたえのある山ですね。とても楽しかったです。

あとは、スーパーのデイリーポートです。安くて美味しい魚が手に入るので重宝しています。

-今後活動していく上での目標を教えてください。

地域おこし協力隊の任期が終わってからジビエ事業を起こすことです。今はそれに向けて頑張りたいという思いがあります。そうすることで、自分自身や他の人の働き口を作れますし、地域振興につながる糸口というか、突破口になればいいなと思っています。

具体的には、まずは食肉処理施設を建てないことには始まらないので、それを建設します。それから食肉としてジビエを販売する。ジビエはどちらかというと地方より都会の方が関心が高いと思います。都会ではジビエ料理が1万円や2万円するコース料理に出されるくらい高級料理なんです。だから、都会の料理店をターゲットにして販売できたらなという思いがあります。でも、その前にまずはジビエが地域に根付くことがすごい大事だと思っているので、大船渡の飲食店でもジビエを扱っていただけたらと考えています。そのために、大船渡市のジビエの出荷制限の解除に向けた取り組みも進めていきたいです。

あとは、活用できるものは全部活用しようという精神で、肉だけではなく皮の加工も考えています。特に雌のシカの皮って革に詳しい人の中ではすごく有名なんですよ。「レザーの中のカシミヤ」と呼ばれているらしいです。シカの皮って、たとえば弓道で使う手袋なんかに使われているんですけど、そういうのも作っていけたらとも思っています。

このような食肉販売や皮の加工といったジビエ事業は、大槌町で既に行われているんです。身近に模範となる事業があるので、まずは大槌町の事例を参考にしていきたいと思います。実際に今も、大槌町のジビエ事業の関係者の方と連絡を密に取り合っています。大槌町と協力しながら大船渡のジビエ事業を進めていきたいと思っています。

事業を起こすまでにいろいろとやらなきゃいけないことはあるんですけど、やっぱり一番は猟友会の方々との良好な関係を築くことだと思います。猟友会に認めていただけないことには猟師としては何かする資格はないと思いますので。大船渡市内にいくつか猟友会のグループがあって、僕は住んでいる末崎町のグループに何度も足を運んでいるので末崎町のグループの方々とは交友関係は出来てきていると思っています。自分のやりたいことを伝えて「応援する」と言葉をかけてくださいました。でも、日頃市とか三陸町とか、まだ他にもグループはあるので、そういったところにも顔を出してコミュニケーションを取っていきたいと思っております。

地域おこし協力隊の任期は3年で、僕は去年の11月に入隊したので、再来年の11月で満期になります。それまでに、どうにか事業を実装できる形までにはもっていきたいです。今からいろいろとやれることはあると思うので、それに自分がやらなきゃいけないとも思っているので、精一杯頑張ります。

〈幻想的な一面を見せる大船渡湾〉

-大船渡市に移住しようと考えている人に対してメッセージをお願いします。

大船渡市はすごく良いところです!釣りができるし、スーパーで買える魚が美味しいし、自然の景色も素敵です。山も海もあるので、アウトドアが好きな方にとっては本当に魅力的な場所です。

それから移住者の皆さんには、ぜひ地域おこし協力隊の入隊を勧めます。やっぱり自分自身の働く場所がないと移住は成り立ちません。それに、大船渡市の協力隊の活動では自分のやりたいことを重視してやらせてもらっています。自由に自分のやりたいことをしながら地域に貢献できるので、地域おこし協力隊をおすすめします。

地方で生活する中で、どうしても自分の思っている通りにいかないときがあるかもしれませんが、それもまた地方で暮らすことの魅力でもあると思います。ぜひ大船渡市に移住して、人それぞれの魅力を感じていただけたらと思います。