第2回 移住者インタビュー『一人でも多くの方を陸前高田へ』 永田 園佳さん

永田 園佳(ながた そのか) 陸前高田市気仙町出身 一般社団法人マルゴト陸前高田 教育旅行チーム担当

“何ができるかわからないけれども、とにかく地元へ”

―地元へ戻られたきっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか。

2011年の東日本大震災をきっかけに、地元や家族の大切さを改めて感じ、地元のためにできることがないか、地元に貢献したいという思いで大学卒業後戻ってきました。

“マルゴト陸前高田で民泊事業を”

―戻られてからは。

大学で福祉の勉強をしていたこともあり、2011年6月に陸前高田市社会福祉協議会の生活相談支援員として、仮設住宅や浸水区域に住んでいる方の家を訪問する仕事を一年間行いました。退職後、陸前高田市米崎町の産直はまなすで、地元の野菜や果物を販売しながらイベントの開催、情報発信の仕事を行いました。その後マルゴト陸前高田の前身である、まるごとりくぜんたかた協議会へ入社しました。

―マルゴト陸前高田でのお仕事は。

中・高校生を対象とした教育旅行事業を担当しています。事業のなかでも大部分を占めているのが民泊修学旅行です。この取り組みは2016年から受け入れが始まり今年(2018年)で3年目になります。陸前高田でのありのままの生活を体験しながら、地元のお父さんお母さんとかけがえのない時間を過ごしてもらいたいという思いで活動しています。

―修学旅行はどの地域から来ることが多いですか。

関東地方が一番多いです。初年度に神奈川県の高校が来てくださったこともあり、中でも神奈川県が一番多くなっています。現在も、来年・再来年まで仮予約をいただいている状態です。

―修学旅行一回の受け入れ人数は。

一回の受け入れは約400名です。

―受け入れ先の数は。

民泊家庭の登録軒数が現在約220軒です。

―受け入れ先の生徒数は。

一軒当たり3名から5名です。陸前高田市では、民泊のはじめと終わりに、はまって会(対面式)とほんでまんず会(お別れ会)を行うのですが、そこで車の送り迎えが必要となってくるので、車に乗ることができる人数が受け入れ人数の基本になっています。

―受け入れ先を探す苦労は。

今でこそ民泊という言葉が浸透し、民泊が実際に何をやるものかが分かっている状態なので、受け入れ先のご家庭の判断も早くなっています。しかし立ち上げの頃は「そもそも民泊とは何か」という説明から行う必要がありましたが、私たちも実際にやったことがなかったため曖昧な説明しかできず、3日間お願いし続けやっと1軒承諾をいただけるという状況でした。やはり、プライベートな空間である家に人を泊めるということに抵抗を感じるご家庭が非常に多いです。

―民泊事業における現在または今後の課題は?

「折角来てくれたなら良い体験をさせたい、良いもの(豪華なもの)を食べさせたい」と考え、おもてなしし過ぎて疲れてしまうご家庭が多いことです。あるご家庭が「泊まった方がご飯を全然食べてくれなかった」と話され、事情を詳しく聞いてみると、実際には食べきれないくらいの量の料理を作っていたケースもありました。

今後は“無理し過ぎずありのままでいられる民泊”の仕組みづくりが必要だと感じています。

―マルゴト陸前高田のその他の事業は。

大学や企業、海外の方を対象に研修の受け入れを行っています。

企業チームでは、新入社員研修やリーダーシップ研修、他業種交流研修など、様々な立場の方へ効果的に学びを提供しています。

大学チームでは、フィールドワーク型研修を主に行っています。自分たちの力で市内を巡りながら地元の様々な方のお話しを聞き、テーマに沿いアウトプットしていきます。

インバウンドチームでは、陸前高田市認定通訳ガイドの方と連携した研修や、陸前高田で“ものづくり”を行っている商店を巡りながら伝統、文化を学ぶ社会科見学プログラムなどを行っています。

全てのチームに共通して行っているのが、民泊です。ニーズが非常に高い民泊だからこそ、可能性は無限大だと感じています。

“一人でも多くの方を陸前高田へ”

―移住に対して。

ぜひ来てほしい、と思う地元の方はとても多いと思います。現在は市内にある移住・定住の法人が、移住者の住む家や仕事等の環境整備を行っています。マルゴト陸前高田でも、陸前高田の暮らしを体験し、地域の方と交流することを目的として、移住体験プログラムを行っています。今後も一人でも多くの方が陸前高田に魅力を感じ、移住に繋げられるよう活動していく予定です。

そして昨年修学旅行に来てくれた高校生の中で、一人、卒業後は陸前高田に移住したいという思いのある子がいて、現在移住に向けて動いているところです。昨年の民泊修学旅行受入れ人数約1,600名の内、一人が移住を決めてくれたということで、これはまちにとって非常に大きな一歩だと思っています。

 “地域に根ざす、地元の方がやりたいこと”

―現在及び今後やりたいこと。

陸前高田に関わる市内外の方の“やりたい”が形にできるような活動を行っていきたいです。市内外の方々を繋げることはもちろん、やりたいことが見つかる環境づくりも大切だと考えています。仕事で地域の方と触れ合う中で、どんなに小さな声でもすぐに察知できるよう日々アンテナをはっていけるよう視野を広く持ち、活動していきたいと思います。

また、今後行っていく活動が本当に地域にとって必要なことかをしっかり見極め、本質からずれないよう考えることも大事なのではないかと考えています。

“地元の良い伝統を残すことも大事”

―マルゴト陸前高田以外で、何か活動されていることなどあれば。

けんか七夕祭りのメンバーとして活動をしています。けんか七夕は約900年の歴史があるお祭りで、陸前高田市でも2大祭りとして掲げています。新しいものもそうですが、地元の良い伝統を残すことも大事だと考えおり、何とか継続していきたいと考えています。他方で、活動資金の減少から毎年存続の危機に陥っているのが現状です。震災前は地域の住民が御花代を出し、それを資金にして運営をしていましたが、震災後は地域の住民がばらばらになってしまったため参加者が減少し、御花代も少なくなっています。震災後はボランティアの協力もあり成り立っている状態です。

震災から7年が経過し、地元にも少しずつ家を再建する方が増えてきました。今後はけんか七夕祭りに関わる地域の方を増やし、良い伝統を後世にも伝えていけるような取り組みをしていきたいです。

“仕事としてだけではなく個人としても、繋がっていきたい”

マルゴト陸前高田の企業研修に参加していただいた方の中で、その後も個人的に何度も通ってくださる方がいます。現在、その方たちと一緒に、陸前高田市小友町にある17世帯の小さな集落の盆踊りを約14年ぶりに復活させようというプロジェクトを実施しています。この様に、マルゴト陸前高田の事業を通して、陸前高田市に来てくれた方たちとの繋がりを継続していくことが非常に大事だと考えています。今仕事を通して関わっている方たちが、将来的に陸前高田に移住するかもしれないと考え、仕事としてだけではなく個人としても繋がっていきたいと思い、活動しています。