第9回 移住者インタビュー『NPO法人陸前高田まちづくり協働センター 種坂 奈保子さん』

種坂 奈保子さん

御出身は。

出身は愛知県です。大学は京都へ行き、卒業後は名古屋で働いていました。

陸前高田市に来られたきっかけは。

大学生の時に一人旅をしていて、たまたま陸前高田市のけんか七夕を見に来ました。その時に、地域の消防団の方達がBBQをしているところを通りかかり、「京都から来たの?」「一人で?」「また、遠くから来たね、飲んで、飲んで」と話しかけられて、BBQに暖かく誘っていただきました。そのことが旅のとてもよい思い出になりました。

その後、震災があり心配をしていました。阪神淡路大震災の時はまだ小学生で何も出来なかったという思いがあり、2011年3月に丁度仕事を辞め、新しい仕事を始めようとしていたタイミングでもあったので、「今しか行けない。」と思い、宮城県石巻市に最初にボランティアに来ました。

初めは4日間の予定だったのですが、結局そのまま5月頃まで居続け、それから名古屋に帰って働くということが考えられなくなり、これからも東北でもっと力になりたいと思うようになりました。石巻市に通いながら、時々陸前高田市の様子や七夕を見に来ていました。(2011年の)9月頃から本格的にこちらで仕事を探し始めました。仕事は地域の人達の仕事を奪ってしまう様なものではない何かがないかなと探していました。石巻市で一緒にボランティア活動をしていた友人からの紹介で、東京のNPO法人ETIC.が、沿岸被災地の地元のリーダーのもとに、若者を県外、市外から派遣して右腕になってもらう「右腕プロジェクト」というのをやっていて、募集が出ていることを知りました。その中に、陸前高田市の「未来商店街」を立ち上げるというプロジェクトがありました。名古屋で働いていた時に店舗デザインの仕事をしていたこともあり、新しい商店街づくりに生かせると思って、面接を受けました。面接の時に未来商店街理事長と意気投合し、「おいでよ」と誘っていただいたこともあり、(2011年)11月に陸前高田市に来ました。未来商店街の契約は1年間だったのですが、まだまだこれからというところで、その後もこちらで仕事を探し転職をしながら、今年で7年目になります。

お仕事について。

現在は、NPO法人陸前高田まちづくり協働センターで陸前高田市復興支援員の仕事をしています。まちづくりのお手伝いをするNPO法人です。私はこの交流施設『ほんまるの家』(2017年10月オープン)が主な担当です。このほんまるの家は、地域の方が街を利用するきっかけになる場所に、というコンセプトで運営されています。ここを利用してもらい自分達のやりたいことを実現してもらう。そんな場所が街中にあることによって、街を自分達のものであるという気持ちになって欲しい。そのきっかけづくりのお手伝いを出来ればという思いで運営しています。

今は、ほんまるの家でどんなことが出来るのかを知ってもらうために、利用促進のイベントを開催しています。これらのイベントもこちらがこういうことをやりたいというよりも、こういうことがしたいという方々を講師にお迎えして、一緒に作り上げていくという様な形です。例えば、昨年(2017年)に開催したイベントの「大きなお菓子の家をつくろう」は、パティシエの経験を持っているが、子育て中のためお菓子の仕事に就けないとおっしゃっているのを知って、手作りケーキを大きな家の形に組み立てて、みんなでお菓子でデコレーションをしてかわいい家を作ってもらいました。他にも、「リラックスカフェ」は、アロマやハンドトリートメントをやっているという方が、アロマが好きだけれど引っ越したばかりでまだ場所づくりまでは出来ていないという御相談があったので、じゃあここで一緒にやりましょうということで開催しました。他にも本の交換会等を開催しています。

ほんまるの家では、訪れた方達にやりたいことを付箋に書いていただいて、それを壁に貼っています。子供の落書きも多いですが(笑)。これを見ながら次にやることのアイデアを出しています。誰かがこういうことをやりたい、と思った時に、最初にほんまるの家を思い浮かべてくれればいいなと思っています。また、こういうイベントへの参加を通してほんまるの家を利用した人達が増えていけば、イベントではなくても子供会や地域のイベント、また家族等でも利用してもらえるようになればと思います。

ほんまるの家の開催イベント

収入について。

こちらへ移住している方々の中には、給与が下がっても生活費が下がっているから大丈夫という話はよく聞きますが、私はそういう考え方ではありません。結構遊ぶことが好きなので(笑)。給与が下がるということをよしとは思っていません。どうやって名古屋に住んでいた頃と同じ様な給与水準でこちらでも住めるか、生活が出来るかということに今挑戦しています。確かに採れたての新鮮な野菜や魚をもらったりすることがあり、また仕事帰りに飲みに行くということが減って、お金が出て行かないということはあります。ですが、結局生活には自家用車が無いと不便ですので、車が必要であったり、また家賃も物価も決して安くはないということもあり、お金の面で得することがあるとは感じていません。旅行に行きたいといった時に、かえって交通の不便な場所に住んでいるために、交通費も時間も余分にかかってしまいます。仕事を休むにしても、都会であれば1日分で済むところが移動のために2日分必要であったりということもあります。それでもお金が無いからといって新しいことを吸収し続けていないと、デザインの様な仕事は今後出来なくなってしまうという思いもあり諦めたくは無いと思っています。

私はデザインの副業もしながら収入にしています。こちらでは残業が無い分、副業をするといったような時間が持てるということもあります。名古屋で働いていた頃はサービス残業も多く、またそうしないとお金というのはもらえないものだと思っていました。こちらへ来て残業が減り18時に帰宅出来て自分の時間を持つことが出来ます。知り合いからデザインの仕事を頼まれ、仕事をし、お金をもらえ、また相手も喜んでくれる。自身のスキルアップにもなり、また本業以外の仕事をすることによって、異なる知識や経験を得たりすることによって、それが本業にもいい影響を与えることが出来ています。例えば、今、子供向けの冊子の製作をしていますが、子育て支援の現状を知ったり、原稿を製作する時に、用語を調べたり等ととても勉強になっています。それがほんまるの家の仕事で何か催しを開催するという時に、子供にはこういったものが必要なんだと気づくことが出来たりすること等です。また、知識や技術もそうですが、そこで築いた人脈等も生かすことが出来、うまく相互作用できている生活だなと思っています。

私は副業はむしろした方がよいと考えています。やりたいと思ったことを挑戦出来る土壌であった方がいい。趣味でもいいと思うのですが、本業以外にも打ち込めるものがあった方が、本業にもよい影響があると思います。なので、副業の禁止等の規則は緩和されて欲しいと思います。また、起業補助金制度等にも副業が是非適用になって欲しいと思います。私も副業を始めようと思い、デザインで使用するパソコン等の初期設備投資や、デザインとは別の他の事業を始めるのにもいいなと思い、起業補助金制度について調べてみたのですが本業のみという規定があり諦めました。

現在の職を捨てて新しく起業する人だけを応援するのではなく、ステップアップのような、まずやってみて経験を得る。その為の補助金制度等があってもよいのかなと思います。仕事を一つに絞ってしまうというのはリスクが大き過ぎます。起業をしてみたいという気持ちが芽生えていても、リスクが大き過ぎればハードルが高すぎて、人は諦めてしまいます。背水の陣に立たせなければ駄目だと言うのではなく、小さなチャレンジが出来ることはよいと思います。主婦の方やお子さんがいるような方が副業で稼ぐことが出来るようになればすごくよいことだと思います。何かをしたいという芽は色々なところであると思うので、それに対応出来る様な色々な選択肢があればいいと思います。リスクを背負わないと成功できないという人がいるのも分かりますが、人それぞれにリスクは異なります。小さなリスクで少しずつ始めていきたいと言う人にも対応出来る社会であればいいなと思います。また、街づくりという面でもそういう方たちがいた方が、色々なサービスやサービスの幅も生まれ、街としてもきっと面白くなると思います。

お住まいについて。

今はシェアハウスで、こちらへ移住してきた3人の女性とルームシェアをしています。シェアハウスだと、家電等を揃える初期投資が抑えられるので、仮住まい又はお試し移住には丁度いいと思います。ただ、御夫婦、御家族で戻って来られたいという方たちにとっては難しいのかなと思います。こちらで給与が下がることをよしとして来た人が、自分で住む所を借りたいと思って、都会と変わらない家賃でマンション等の部屋を借りるとなると大変なのかなと思います。

他にも、家探しについて言えば選択肢がない状況です。私も物件の条件等で選びたいのですが、家賃でしか選べない状況です。住む所を探した時に、家探しは苦労すると思います。徐々にではありますが、空室も出てきてはいます。家賃に関しては、東京のワンルームの値段で、2階建ての戸建てを広い庭と駐車場付きで借りることが出来ます。そういった面では、都会より全然いいかなと思います。

他には空いている災害公営住宅に入居できるようになったらいいなと思います。空いているのでもったいないなと思います。もちろん、被災者や生活困窮者の方が優先されるべきだと思いますが、入居者が未定ということであれば、短期間でもいいので貸し出すことはよいことではないかと思っています。建物が空いていることももったいないですが、こちらへ来たい、移住したいと思っている人達が、住む所が見つからないという理由で、来られない。移住を諦めてしまう人がいることがもっともったいないなと思います。やはり、移住・定住に関して、先進的な自治体は対応が早いですし、古い公営住宅でもお洒落にリノベーションをして若い世代を呼び込んだりしています。そうやって、積極的に取り組んでいる自治体がある中で、何もしていないというのは遅れをとることだと思います。

全てにステップが必要だと思います。一足飛びに起業や移住というのは難しいと思うので、その中間ぐらいの選択肢があるとよいと思います。本当にもったいないなと思うのはUターンやIターンをしたい人達が、仕事や住居を理由に戻って来られないということだと思います。いつか戻って来たいという話は聞きますが、なかなか踏ん切りがつかないという話もよく聞きます。東京周辺で長く働いて、それなりに収入も地位もある人達が、戻ってきてその給与や生活水準を維持しようと思うと、起業しか選択肢がない。それではなかなか戻って来るのが難しいのかなと思います。こちらには面白い仕事や可能性はたくさんあると思います。私もそれを何とか出来ればと考えています。

地域の交通について。

愛知県からの移動については、花巻空港-名古屋空港、もしくは花巻空港-小牧空港間がとても便利です。一日に4便出ていて、片道1万数千円。時間も70分程度です。私も年に何回も利用しています。冬は花巻空港まで行くのが少し大変ですが、名古屋からこちらはすごく近く感じて、かえって東京の方が遠く感じています。名古屋への移動という意味ではすごく満足しています。

普段の生活については確かに車は必要で、無いと何もできないというのは感じています。しかし、個人的にこれまであまり車に乗っていなかったこともあるので、思い立ったらどこへでも行け、車中泊をすることも出来るので、今は楽しいと感じています。名古屋に住んでいた頃よりも行動範囲は広がったように感じています。ただ、お酒を飲んで帰った時に移動出来ないのは残念ですが。そういう不便さもありますが、あまり気にはなっていません。マイナス面もありますがプラス面もあるからです。

気仙に住んでみて。

気仙には美味しいものがとてもたくさんあると思います。私は子供の頃から両親に色々な場所へ連れて行ってもらったり、また自分でも全国を旅していて、色々なものを食べてきていて、食いしん坊ですし又食にはうるさい方です(笑)、それでも三陸の海産物に限らず地域のものを食べて、人生で一番美味しいみたいなものがたくさんあります。ウニやりんごはもちろん。しいたけ等も。こういうのは本当に財産だと思います。食いしん坊の人は絶対に好きになると思います。私も胃袋を掴まれています(笑)。

三陸の美味しい海産物

美味しい地元のお酒 (写真手前)

他にも、ここには頑張っている人がすごく多いと感じます。それは自分にとってもとても刺激になっています。右を向いても左を向いてもみんなが頑張っている。お金のためだけではなく、地域のためにも。まっすぐに頑張っている人が多いのはすごく刺激になるし、自分でも何かをやりたくなります。また、応援もしたくなります。心が健全でいることが出来ます。都市部に住んでいると、「なぜ、人の足を踏んで謝らないのだろう」や「なぜ、公共の面前で喧嘩をするのだろう」、「なぜ、この人は笑いながら人をだまそうとするのだろう」と理解が出来ないことも多々あります。都会と一括りにするのもよくないですが、そういうことが無いだけで、心がとても健康でいられます。何の心配も無い、安心感。財布を落としても必ず戻ってくるだろうなとか、子供に知らない人に挨拶をしてはダメなど言わなくても済んで、誰とでも話しておいでと言える。こういった過ごし方が出来る安心感は何物にも代えがたいです。健やかな気持ちで暮らせるというのはこんなにもいいことなんだなと知りました。

最後に。

この6年間で話してわかる同世代の友達も出来ました。何かをやると言えば手を貸してくれたり、一緒になってやってくれる仲間達が出来ました。面白いことをやっていきたいねと言い合える、皆で刺激しあって、先にやられてしまったら悔しい、じゃあ、私は次はこれをするというような。もし今からこちらに来て何かをやりたいという人がいれば、人を紹介してあげることも出来ます。面白い人や困ったら助けてくれる人、専門技術を持った人等様々な方がいます。もちろん楽しいことばかりではなく、大変なこともありますが、大船渡市、陸前高田市、住田町が一体となって、楽しく街づくりを出来ていると思います。

箱根山の展望台からの眺望(陸前高田市内)