第12回移住者インタビュー『One Love Disciplers 教会 小手川 裕美さん』

 小手川 裕美(こてがわ ひろみ)さん

御出身は。

出身は東京です。小学校に上がる前に、父の転勤で北海道の札幌市へ家族で引っ越して、高校卒業まで札幌で過ごしました。その後、また家族で東京へ戻り、東京で短大を卒業後、私立幼稚園で5年間働いて、昨年(2017年)の春に陸前高田市に引っ越しました。今は大船渡市に住んでいます。

こちらへ来られたきっかけというのは。

短大の2年生だったときに東日本大震災が起こり、当時住んでいた東京で立っていられないほどの揺れを体験し、その後にテレビで見た津波の映像や被害の状況にとてもショックを受けました。震災後、被災地の子ども達の、遊び場が無い、安心して暮らせる環境が無いといったことをテレビの報道等で知り、保育の道を志していたこともあり、とても胸が痛みました。「私にも何か出来ることがあれば」と思ったのが最初ですが、震災後、三陸へ移り住んで働いていた方との結婚を機に、私も三陸で働くことを考え引っ越してきました。

一番最初にこちらへ来たのは、震災から約半年後の2011年9月です。私が所属していたキリスト教の教会で、すでに被災地に入りボランティアをしている団体がありましたので、そこへ参加しました。当時は、まだ学生だったということもあり、休みを利用しての訪問でしたが、その後も移住をして活動していた知り合いのもとを度々訪れていました。主な活動場所は陸前高田市と大船渡市でした。

被災地域はとても広かったと思うのですが、何故、陸前高田市と大船渡市へ?

私が所属している教会が、香港の関係団体と強い結び付きがあり、その香港の団体から宣教師がこちらへ支援に来たいということになり、その時に教会の一番少ない地域へ支援に行きたいという希望がありましたので、全国でも最も教会の少ない地域の一つであるこの岩手県沿岸南部の陸前高田市と大船渡市で活動をするということになりました。

当時はどのような活動をされていたのでしょうか。

私は震災直後の活動に参加していたわけではなかったので、話を聞いたり、写真で見たりした話になりますが、震災直後は仮設住宅に支援物資を届けたり、仮設住宅の集会所で編み物教室やお茶っこ会のようなイベントを開催したりしていたそうです。当時は、香港から来たスタッフと日本人スタッフが混在した4つのチームが、宮古市、大船渡市、陸前高田市のそれぞれ3カ所で活動していました。その後、今後も継続して支援活動を行っていくのであれば、距離が離れていると、お互いに助け合ったり、励まし合ったりすることが難しいのではないかという話になり、2016年頃に、その3つのチームが大船渡市・陸前高田市に集まり、両市を拠点に活動を続けていこうということになりました。現在は、香港からの3組の夫婦、それぞれ愛知県、和歌山県、山口県からの日本人スタッフ3名と私を入れた10名で活動をしています。

一番長い方でどのぐらい活動されているのでしょうか。

一番長いスタッフで震災の半年後ぐらいから現在まで、この岩手県沿岸地域で活動しています。スタッフはもうずっとこちらに住み続けるという決意で活動しています。

最近の活動についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

昨年(2017年)までは大船渡市の赤崎町で、コミュニティースペースとしてカフェを開いていたのですが、最近は大船渡市防災観光交流センターやキャッセン大船渡等の施設が出来ましたので、カフェは今年(2018年)の2月で終了しました。現在は、この盛駅前に場所を借り、こちらを拠点に若者支援、特に、小学校高学年から高校生を対象として活動しています。

何故、小学校高学年から高校生までを対象にされているのでしょうか。

この地域は近くに大学等が無く、高校を卒業すると多くの子ども達が地元を離れてしまいます。その後、地域に戻ってくる人たちがいなければ、地域には人がいなくなってしまいます。この地域の子ども達は、ここには何も無い、何も出来ない、都会へ、どこかへ行けば何か出来るのではないかという思考になってしまっている子が多いと聞きます。そうではなくて、場所や環境が、何も無い、何も出来ないを決めてしまうのではなく、自分自身に価値があって、どこでも輝くことが出来るんだよということに気づいて、またそういう考え方を持って、今後の人生を歩んでいって欲しいという気持ちで、主にその年代の子ども達を対象に支援活動をしています。

現在の活動場所

この場所は、学校が終了した後に、学生たちが自習をしたり、ボードゲームをしたり、皆の居場所といった感じで、自由に使えるような場所になっています。たまに親子向けの講座として、心理カウンセラーの資格をもっている方を講師にお呼びしてセミナー等も開催しています。その他にも地域のショッピングセンターや、大船渡市防災観光交流センターなどで場所をお借りし、他のNPO団体さんと合同で、英会話教室等を開催させていただいたりしています。私たちの活動としては、特にこういった支援をするというプログラム等があるわけではなく、地域の子ども達と一緒にご飯を食べに行ったり、お互いの家に行ったりというようなことをしています。家族のように共に歩むといった感じです。

お住まいについて。

今年(2018年)9月に結婚をしまして、アパートで新居を探していたのですが、主人と私で車を1台ずつ持っていて、それぞれの駐車代などを足していくと結構なコストだよねという話になり、たまたま不動産屋さんで見つけた一軒家を借りました。知り合いの高校生がたくさん通っている高校が近くにあり、また知り合いの中学生の子達も将来はそちらの高校へ進学したいと言っている子が多いので、これから会いやすくなると思うととても良い立地で、満足しています。

移動について。

車の免許は大学生の時に取っていたのですが、東京にいたときは1年に1度運転をする程度のペーパードライバーでした。こちらへ引っ越してきてからしばらくの間は、友達の車に同乗させてもらいながら生活をしていたのですが、さすがに不便だなと感じ、中古車を購入しました。初めは、友達に助手席に乗ってもらいながら、広い駐車場の中を運転する練習からでした。運転が出来るようになってからは、ほとんど不便さは感じていません。私にとって車は自分の家のような感覚で、とりあえず荷物を載せて置けばいつでもどこでも使えるといった感じで非常に快適です(笑)。これが地域の公共交通機関だけを利用しての移動となるとなかなか大変だろうなと思います。学生たちの話を聞いていると、陸前高田市から大船渡市まで公共交通機関で高校に通っている子がいて、通学に1時間かかっているそうです。最寄り駅までは親御さんが送り迎えをしている家庭も多いようで、親御さんも大変でしょうし、部活動などをしている子であれば送り迎えは必要となってくると思います。こちらの親御さんは本当に献身的で尊敬しています。大人であれば車を運転して遠くまで行けますが、子ども達の様に公共交通機関を利用するだけの移動手段しか無いと、遊ぶ場所も限られてしまうのかなと思います。そういう状況もあってか、地域の子ども達は自分の力ではここまでしか行くことが出来ない、地域には何もないと感じてしまうのかもしれません。

仕事について

現在はこの団体で、フルタイムではなくサポートといった感じで団体の活動を手伝っています。去年(2017年)一年間は、教会のトレーニングを受けていて、また視野も広げたいということで、陸前高田市のNPO法人でも働きました。トレーニングは今年(2018年)の3月31日で終了になりましたので、現在は今後の働きについて考えているところです。もともと東京では幼稚園に勤めていたこということもあって、市役所等からは保育士不足なので連絡をくださいと言っていただいたのですが、今年(2018年)の春で一区切りついたこともあって、今は自分が今後どのように働いてくべきか考えているところです。今後はもし教会から収入面についてのサポートが受けられるというのであれば、これまでの様にどこかに勤めるという形ではなく、現在の様に学校外の時間に中高生達のサポートを続けていくことが出来ればいいなと考えています。そして、この町の皆さんの友達となり、家族となりたいです。

日々の生活の中で感じていることなど。

出身は東京都ですが、青春時代を過ごしたのが札幌でしたので、故郷というと札幌を思い出します。その為か、東京の様に人口が集中しているような地域は住みづらいと感じてしまいます。こちらは札幌と似ていて、のびのびしています。それが私にすごく合っていて、とても心地良いです。日々の生活の中で、何が自分にとって本当に大事なのかを考える時間を与えてくれる、今しなければいけないことに心を捉われるのではなく、自分がどう在りたいのかを考えさせてくれるとてもよい環境だなと思っています。人生はいつか終りますので、今しなければいけないことばかりに時間を使うのではなく、目的を持って主体的に過ごしていきたいです。他には、こんなにも海が近い生活をしたことが無かったので、自然は大事だなと改めて思います。また、食べ物がとても美味しいので私にはこちらはとても魅力的な場所です。

海産物等は苦手では無いでしょうか。

海産物は大好きです。こちらの海産物は本当に美味しいです。去年(2017年)1カ月ぐらい(大船渡市)甫嶺のダイバーをしている方のところで、お手伝いをさせていただいたことがあり、その時にホタテ漁船や、ホヤや蛸の漁師さんの船に乗せていただきました。生産者と直接触れ合い、そういった方たちの生活に接して、すごく貴重な体験でした。今まではテーブルの上に出されたものを食べるだけで、それがどうやって採られたのか、その背景まで考えたことがありませんでした。ホヤも付着している小さな貝や海藻など一つ一つ丁寧にとても綺麗にごみ取りをするのですが、一つ一つ本当に手間が掛かっていて、それが食卓に届いているということを体験して学べました。そうやって生産者と消費者がすごく近くにいるというのはお互いにとってすごくいい環境であると思います。また、その漁船から朝日をみたのですがとても綺麗でした。今年(2018年)の年賀状の写真にしました。

他にも、取れたてのワカメは本当に美味しいです。SNSに友達が載せていた早採りワカメのしゃぶしゃぶというのをずっとやってみたくて、昨年初めて体験したのですが、あんなにきれいに緑に変わるのだなと本当に感動しました。ただ食べ過ぎるとお腹を壊すので駄目だよと言われましたが(笑)。

こちらにはすぐ慣れましたか。

東京とは全然環境が違いますので、振り返ると、最初の頃はやはり慣れませんでした。例えば、買い物で言えば、東京では買いたいものがあれば、自宅と勤め先の通勤ルート上で、あそこへ行こう、ここへ行こうと通勤のついでに済んでいたのですが、こちらだと物によっては近くで買えるところがありませんので、他の地域へ行かなければなりません。岩手県は広いので、もしそれが盛岡だとすると行くだけでも3時間かかります。以前はついでで済ませることが出来ていたことが、こちらではそれを目的に行かなければならないということが、最初は感覚として慣れませんでした。ただ、こちらのそういう普段の生活があるので、たまに盛岡や仙台へ行くととても楽しく感じます(笑)。

東京では目に映るものもそうですが、イベント等もたくさんあり、情報がとても多いです。今これを考えたいと思っていることの邪魔をされる、集中を削がれるようなことがあります。車移動が多いからかもしれませんがこちらではそういうことが少ないです。例えば、東京だと洋服を勢いや衝動で買ってしまうことも多かったのですが、本当にこれは必要だったのかと後で考えることも多かったです。また、バーゲンであれば安く買えるから行きたいということになり、本当に必要な服が何であるのかを考えず、そこへ行くこと自体が目的となってしまって、後で必要な服が無いということもありました。こちらに来てからはそういうことがあまりなくなりました。今あるもので満たされている、今あるもので何とかするといった考え方になりました。もっともっととなるとキリが無いですし、こちらに住んでいると、物よりももっと大切なもの、人間の基礎、根底の部分について考えさせてくれると感じています。

また、震災のあった地域ですので、地域の方々は人の命についても思いが深く、また色々な思いを抱えられています。そういった方たちをみて、またこちらも考えさせられます。いつ何があるか分からない、今が当たり前ではない、だから今日どの様に生きるかということをいつも問われているような気がします。東京では、今日中にこれを終えなければいけないといつも急かされているような感覚があり、それをすることによって自分の人間性にどの様な影響があるのかをあまり考えていませんでした。今命があるのも偶然ではない。それを意識することが出来る。震災についても、東京では忘れがちになってしまっていますが、陸前高田市などを車で運転していると今も復興工事が盛んに行われていて、そのような風景からも震災について考える機会を日々もらっています。

地域の方について

私の中学校の修学旅行が、青森、秋田、岩手の東北3県をバスで巡るというものだったのですが、その時に初めて岩手県を訪れました。グループ行動で信号の無い横断歩道を渡ろうとして、一人が手を上げたら、通行していた車が一斉にピタッと止まってくれてすごく感動しました。その後も道に迷っていたら、通りかかった方が「どうしたの。」と声を掛けてくださり、「連れて行ってあげるよ。」と一緒に目的地まで連れて行ってくれました。教えてくれるだけではなく、その場所まで一緒に連れて行ってくれ、「なんて、岩手の人は優しいんだろう!」ととても衝撃的でした。その時に訪れたのは盛岡市と一関市だけでしたが、その時の経験で私の岩手県の人の印象は「優しい」でした。

その後大人になって来たのは、陸前高田市と大船渡市でしたが、やはり皆さん本当に優しいです。初対面の時は皆さんまだ打ち解けていなくシャイな感じなのですが、一度打ち解けると本当に気さくです。知り合いになると色々な事を教えてくれたり、ワカメやリンゴなどの海産物や農産物をたくさんくれたりします。聞くところによるとそうして旬のもの等をくださるのはこちらの文化だそうです。子どもたちも勉強と部活を一生懸命しているような本当にいい子たちばかりです。横断歩道でこちらが車を停止して、待っていてあげると、小走りに走って渡り、渡り終えると軽く頭を下げてお礼をします。皆がその様な感じですので本当に感心します。バスでも運転手の方に乗るときは「よろしくお願いします。」、降りるときは「ありがとうございました。」と言っていく子たちを見ていると、本当に気持ちがいいです。私も「ハッ」とさせられますし、見ている人にも本当に良い影響を与えると思います。

こちらでの大変なことは。

寒さが苦手なので寒いのがつらいですね。朝晩が特に寒いです。ダウンを一年中車に積んでおいた方がいいと言われ、本当にそのとおりだなと思って積んでいます(笑)。買い物等は今はインターネットで買うことも出来ますし、こちらへきて本当に必要ものだけを買うようになりましたので、その点については三陸に教えてもらい感謝です。

今後について。

普段地域の方とお話をしていて感じているのが、特に学生はそうなのですが、ここには何も無い、だからきっとここを出れば何かがあるだろうという考え方になってしまっている様な気がします。そういう方たちに、そんなことないよと、この街にはこの街だけの魅力があるよと伝えていきたいです。私はこの街自体にも魅力を感じていて、私の友達や、家族もこちらへ来たことがありますが、色々な物が美味しい、景色が綺麗、人が優しいと言います。地域の方が良いお仕事をされていて「本当にすごいですね!」と褒めても、「いやいや。」と謙遜されますが、その時に、本当にそれがすごいこと、価値があることなのだと、これからもこの地域に住みながら伝え続けていきたいと思います。そしてそれがいつか、「この街の人たちは本当に希望があるよね。」といわれるような、この街の魅力の一つになればいいなと思っています。

現在の活動場所の入り口にて