第13回移住者インタビュー『NPO法人With You Global 譚 浩洋(タン コウヨウ)さん 、周 燕芬(チャウ インファン)さん』

譚 浩洋(タン コウヨウ)さん(左) 周 燕芬(チャウ インファン)さん(右)

こちらへこられたきっかけは。

東日本大震災です。震災が起こったとき私たちは香港にいて、テレビのニュースで被災地の様子を知りました。私たちも現地へ行き手伝いがしたいという気持ちになり、当時妻は大学で事務の仕事を私は香港の警察で働いていましたが、辞めて、教会の知人を通じてビザの申請を行いました。ビザの降りた半年後(2011年11月)すぐに日本へ来ました。最初は宮古市で支援活動を始めました。

最初の4、5年間は、支援物資を配ったり、仮設住宅の訪問やイベントの開催などを行っていました。海外からの外国人ボランティアチームの受入れも行っていました。主にイベントを一緒に開催していました。香港からだけではなく、カナダ、台湾、アメリカから多くのボランティアが来ました。当時は日本語があまり上手ではなく、出来ることは多くはなかったですが、出来ることをしようと思い活動を続けていました。相談もただ聞いてあげることしかできませんでしたが、地域の方は「私の話すこと分からないわよね~。」と言いながら、それでもとても優しかったです。また、話すことで気持ちが少し楽になったようでもありました。そういったコミュニケーションは私たちにとっても、とても楽しかったですし、また、ただ傍にいるだけなのも大事なのかなと思いました。

それから2014年に沿岸の被災各地で活動していた団体のスタッフが集まり、今後の支援活動の継続と被災地への貢献について話し合いました。その結果、今後はNPO団体として活動をすることになり、2014年からNPO法人化し大船渡市を中心に活動しています。大船渡市に拠点を移した2014年から昨年(2017年)の2月までは、地域の方の居場所づくりということで、(大船渡市の)赤崎町でカフェを運営していました。地域の方からカフェに対する要望等を聞き、ある方が「昔はここには(カフェのあった場所には)ビリヤードがあったんだよ。」と教えてくれ、ビリヤード台を買いカフェに置いていました。数名の常連客が毎日来てくれ、友達になることもできましたが、学生が立ち寄りづらい場所に立地していたため、私たちがカフェを運営する上で最も強く望んでいた学生との関わりが果たせないと感じ、昨年(2017年)の2月で終了することにしました。その後、駅の近くであれば学生たちも来やすいだろうと考え、この場所(大船渡市盛町盛駅周辺)を新しい活動拠点として借りました。この場所は私たちの打合せやセミナー等を開催する時に使う他に、学生たちが勉強やおしゃべり、英語で話したいとき等に、自由に来れるよう無料開放しています。学生たちの居場所づくりということで、学生たちが居やすいよう彼らの希望を聞きながら運営しています。

普段の活動について。

私たちはこの地域の出身者ではなく、また長く住んでいるわけでもないので、この地域に何が足りていないのか、必要なのか、また地域の方が何を必要と感じているのかが、分かりません。“まちづくり”は地域住民と一緒に考えていかなければならないと思いますので、地域の方とコミュニケーションを取りながら、必要なことは力を併せて一緒に叶えていきたいと思っています。先日、地域のショッピングセンターの方から、従業員の防災教育の一環として、災害時の外国人の避難誘導を行うときの簡単な英語を、従業員の方に教えて欲しいと頼まれ協力させていただきました。私たちも防災についての英語というのは面白かったですし、このような地域貢献活動を今後もしていきたいと考えています。

また、地域の方と一緒にこの広い世界を知っていきたいと考えていて、特に、若い世代が世界を経験する機会があって欲しいと考えています。そのことに関連して、今年(2018年)の10月に、国際交流の一環としてアフリカのウガンダWatoto孤児院村の子ども達が来日し、(大船渡市の)リアスホールでコンサートを行いました。コンサートの他に子ども達は自分の生い立ちや、ウガンダではどういった生活をしているか、アフリカではみんな踊りが好きで自分たちは世界各国でパフォーマンスを行いたいなど、とても夢のある話をしてくれました。子ども達の大半は孤児ですが、将来は海外の人たちと交流したいなど皆希望を持っていました。こちらも被災はしましたが、夢をもって将来へ向かっていこうということを、地元の人たちに伝えることのできる本当に素晴らしいパフォーマンスだったと思います。これからもこのように私たちにできる世界と大船渡を繋ぐための活動をしていきたいと考えています。

日本語はいつから習い始めたのでしょうか。

日本語は香港にいた時も少し習いましたが、本格的には日本に来てからです。最初に住んでいた宮古市で元学校の国語の先生が、外国人のために日本語を教えている教室がありそこへ通いました。海外から嫁いできた方等、宮古市にはもともとかなり外国の方がいるらしく、この先生は、その方たちが生活に困らないよう自分で団体を設立し、日本語を教えたり生活支援等をしているそうです。私たちもとても助けられました。

震災後で外国人はほとんど帰国していて、教室も一度はやめていたそうですが、私たちがインターネットで教室のことを知り、「日本語を勉強したいです。」と連絡すると、勉強したい人がいればということで私たちのために再開してくれました。教室では参考書を読んだりテキストを解いたりしました。自分の理解度を確かめるために盛岡市で日本語能力試験も受けました。先生は1名でしたが、外国人と英語で話したい人や交流したい人がアシスタントとして集まっていました。

香港で習っていた時は話す機会がないのですぐ忘れてしまい、日本へ来た最初の頃も、これは習ったことがあるけど思い出せないといったことがよくありました。こちらへ住み始めてからは、普段の生活の中で日本語を聞いたり、自分が伝えたいことを一生懸命に伝えようとするので、香港にいた時より早く覚えることが出来ました。最初は言葉ができなく、何かの申請や携帯電話、インターネット等の契約など生活に必要なことも出来ず、大変で困っていました。生活をするとなるとやはり言葉ができないと難しいですね。今でもお店の方に敬語を使われると分からない時もあるので、そういう時はいつも「簡単な日本語でお願いします。」とお願いしています。

こちらでの生活はどうでしょうか。

こちらは住みやすいと思います。香港人は日本の食べ物や文化は好きだと思います。香港にも寿司屋、ラーメン店、居酒屋などの日本の飲食店がたくさんあります。普段の食事は日本人とほぼ同じです。特に魚貝類は、こちらの方が断然美味しいですが(笑)。

こちらの海の物では何がお好きでしょうか。

何でも好きです。サンマも好きですし、ウニ、アワビも美味しいです。ホタテや牡蠣も美味しいです!私(チャウさん)の両親は、元漁師で魚屋だったので、こちらへ初めて来たとき「魚が美味しい!」、「しかも安い!」とスーパーで驚いていました(笑)。滞在中はたくさん買い毎日食べていました。とても喜んでいてとてもよかったと思います。私たちも(大船渡市の)さんま祭りを毎年とても楽しみにしています。こちらのお魚は本当に美味しいです。

また、日本の教育、医療、税金システムもいいと思います。他に、日本は四季がとてもはっきりしていてとてもきれいだと思います。香港には冬と夏しかなくまたそれほど変化もありません。こちらに住んでから季節が変わるのがとても楽しみです。秋には紅葉を見に行きました。冬も白くてとてもきれいです。その他、日本の方は国内旅行が好きですね。香港は小さく国内旅行をするといった習慣がありません。旅行というと日本や台湾へ行くなどです。私たちも日本に住み始めてから国内旅行をするようになりとても楽しいです。

これは岩手県へ来てから知ったのですが、岩手県は日本で2番目に広い県で、北から南まで3~4時間かかります。九州に住んでいる友達は1時間運転すると他県に行けると言っていたので、岩手県はとても広いなと思います(笑)。

日常の生活で困ることなどは。

洋服等の買い物は不便だなと思います。普段はインターネットで購入しています。実際にお店で見たいときは、盛岡市や北上市、(宮城県)仙台市などへ行きます。以前、宮古市に住んでいた時は、仙台は遠く行くことはできなかったのですが、大船渡市に引っ越してからは、2~3時間で行けるようになり、それは便利になってよかったなと思っています(笑)。

日常の移動手段について。

普段の移動は車です。こちらは車が無いと大変だと思います。香港で車の免許は持っていましたが、公共交通機関が便利なのでほとんど運転しませんでした。こちらへ来てから運転をしなければいけなくなったので、最初は経験者に隣に座ってもらい教えてもらいながら、また自分で運転ができるようになりました。とても嬉しいです。

日本での運転は難しくはないでしょか。

香港の道路事情は東京に似ていて、運転は香港よりも岩手の方がし易いです。東京で3~4回程運転をしたことがありますがとても怖かったです(笑)。皆さん本当に安全に運転されていてすごいなと思います。

香港からこの沿岸地域にはどうやって来られるのですか。

最初は東京へ飛行機で行って、東京からは新幹線で一関市へ行き、そこから(JR東日本)BRTで大船渡市です。ただ、この行き方は乗り換えが複雑ですし、時間もすごくかかります。他に、香港から大阪、大阪から仙台空港か花巻空港へ飛行機で行くルートもあります。香港から台湾、台湾から花巻空港のルートも、台湾便が1週間に2便あるので時間があえばいいと思います。

お住まいについて。

今はアパートを借りて住んでいます。以前、住んでいた地域から比べると家賃は倍近くになりましたが、それでも香港と比べると安いですし、今は生活費については香港の教会からサポートを受けているのでそれほど負担になっていません。

生活費についてはどうでしょうか。

こちらの生活費はそれほど高くないと思います。また、日本には節約の文化があり、不要な時は電気を消したりなど様々な知識があります。それがほんとうに素晴らしいと思います。私たちもこちらに住んでから必要な分だけを使うといったように節約するようになりました。

岩手県の気候についてはどうでしょうか。

香港は雪が全く降らないので、最初に宮古市で雪を見たときは白くてとても綺麗だなと思いました。毎日の雪かきは大変でしたが(笑)。また、こちらの冬は暖房がないと生活できないことにも驚きました。香港には暖房器具がなく、こちらへ来て初めて見ました。最初はとても興味深かったです。こちらは本当に寒いです(笑)。

地震等の災害について。

私たち香港人には地震の知識がありません。地震が起きた時どういう行動をとらなければいけないのか、分かりません。こちらへ来て初めて地震を経験したとき、外へ出なければと思い出たのですが、他の人は誰も出ていませんでした(笑)。

香港に地震はないのでしょうか。

台風は毎年来ますが、香港に地震はありません。香港は建物がとても高いので、もし地震があればとても危険だなと思います。また、香港には土砂崩れもないので(北海道胆振地方の地震による土砂崩れは)驚きました。そういう災害についての心配はしています。

その他に普段生活をされていて感じていることなど。

こちらへ来てから新しい趣味ができました。香港では忙しく、また便利なので何でも買っていましたが、こちらへ来てから自分でやってみたいと思うことがたくさんあります。今は野菜を育てています。

何を育てられているのでしょうか。

最初はミニトマトの1種類だけでしたが、今はキュウリとピーマンも育てています。最初の年は、緑色のトマトがいつ赤くなるのかと、毎日楽しみにしていました。本当に赤くなったときは、「本当に、赤くなった!」と、とても嬉しかったです。また、最初は自分で育てたものが本当に食べられるのか心配でしたが、美味しかったです(笑)。これもやってみたいあれもやってみたいなと2種類、3種類と増えています。

そういうことを楽しんでいただけるのであれば、田舎暮らしはいいのかもしれないですね。

そうですね。また、野菜の栽培を始めたら、ご近所さんと「どうやって育てたの。」、「どうやったら上手くできるの。」と会話の話題にもなります。育てている野菜が皆それぞれに違うので、「こんなのやったよ~。」と言いながら、自分の野菜と交換したりしています。こういうことにも最初は本当に驚いていました。香港ではこちらと違い隣に住んでいても挨拶をしないので、こういうのはとてもいいなと思っています。また、2カ月前に香港から父と母が初めて日本へ来たのですが、それを知ったご近所の方がわざわざ家までご挨拶に来てくれました。父と母は「日本人は優しいな。」、「日本へ来る前は日本人は中国人をあまり好きではないと思っていたけれど、印象と違うな。」と話していました。実際に来てみると、人が優しかったり、食べ物が美味しかったり、とても楽しかったようです。

御両親が来日された時の様子

香港の方は岩手県のことを御存知なのでしょうか。

現在は香港でも岩手県や東北地方の旅行の宣伝があります。東北地方の観光地を紹介するテレビ番組などもあります。香港人は東京と大阪にはもう何度も行っているので、今は新しい旅行先を探しています。是非こちらへきて欲しいなと思っています。

来年(2019年)の8月に友人もこちらへ来る予定にもなっています。「東北って、岩手って何が有名?」と聞かれ「魚が美味しい。」と答えました(笑)。友人がインターネットで岩手県のことを調べていて、宮城県はよく宣伝しているのに、こちらは載っていないと言っていました。空も綺麗でこんなに素敵なのに本当にもったいないなと思います。また、先日、知り合いにホタテ等の養殖をしている漁師さんを紹介してもらい、船に乗ってホタテの養殖場を見学しました。養殖の説明をしてもらいその場でホタテの殻を開け食べさせてくれました。身が本当に厚くて甘くて、これも是非友達にも食べさせてあげたいと思っています。

その他に、夏のキャンプ場もいいです。(住田町の)「種山高原星座の森キャンプ場」に行ったことがあるのですが、星がとても綺麗でした。香港の人なら絶対に感動すると思います。また、冬はスキーやスノボも出来ます。

スキー場はどちらへ?

北上市の「夏油高原スキー場」や奥州市の「ひめかゆスキー場」へよく行きます。今は台湾からのツアーがあるらしく、スキー場で台湾語を話している利用客をよく見かけます。香港からもそういうツアーがあればいいなと思います。旅行先としてこちらは本当に魅力があります。

もっと香港や国外からこの岩手県の三陸へ来ていただくには何が必要だと思いますか。

資格があり英語でガイドできる人がいれば、旅行客は岩手県の様々な地域へ行くことが出来ると思います。最近は大船渡でも大手民泊紹介サイトで2、3件の登録がありますが、これも必要だと思います。宿泊場所は民泊でもいいと思います。陸前高田市には民泊を紹介する団体などもありますね。

香港の方は宿泊場所はホテルなどではなく一般家庭に泊まる民泊のようなホームステイ等でも大丈夫なのでしょうか。

どちらでも大丈夫だと思います。ホテルであれば快適でしょうし、もしホームステイであれば伝統的な日本の家ということでいい経験になると思います。旅行の目的によると思います。先日、来日したWatotoのウガンダの子ども達は、陸前高田市と大船渡市で2日間ホームステイでした。いい経験になったと思います。

今後していきたいことなど。

個人的には国際文化交流をしていきたいと考えています。以前、住んでいた宮古市でそういう活動をされている方がいて、私たちも助けていただき、またとても刺激を受けました。自分もそのように、日本に住んでいる外国の方を地域と、また地域の方を世界と繋げる貢献活動をしていきたいと思っています。

来年は、隣の釜石市でラグビーワールドカップ2019の試合も開催されますが、そのときに何かされたいことなどありますか。

もし、ボランティアなどをされたい方などいれば、英語を教えてあげたりなどはできるのかなと考えています。私たちの友人も来るそうなので私たちもとても楽しみにしています。